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この、季節 あの、日  (望月編)  1.




 みんなが、さぁちゃん、と呼ぶので、気が付いたらそう呼んでいた。
 幼稚園児だった頃記憶なんてないけれど、親たちが「そうだった」と言うのだから、そう、に違いない。



「友久はねえ、やっと幼稚園に入る年に、小学校に行く気だったのよ。さぁちゃんがね、ランドセルを買ってもらってて。友久と年の離れたおねーちゃんも、もうずいぶん前からランドセル持ってたから、てっきり自分も買ってもらえるもんだと思ってて、買って買ってー、って。ばかよねえ」
 高校三年生の二学期も始まって、一緒に課題でもやろうか、と友久と一緒に帰ってきた日菜は、まだまだ残暑が厳しいわねえ、と母親に出された麦茶に遠慮がちに口を付けながら、そりゃばかですねえ、と同意する前に、
「さぁちゃん? て誰です?」
 と聞いてみた。
 母親はけろっとして、
「近所の女の子なんだけどね。西脇さんとこの紗穂ちゃん。うちのおねーちゃん、よりは友久の幼馴染、ね。友久のほうが年、近いものねえ? よく遊んでもらってたわよね」
 と、自分の分は用意されなかったのでセルフサービスで麦茶を用意する友久に小首を傾げてみせる。
 友久は内心でものすごく、勘弁してくれ、と思ったのは悟られないように、
「んー、まあ……」
 あいまいな返事をしたのは、実際、あいまい、だったからだった。
「二コ上だったし、オレが付いて歩いてただけじゃん」
「え、二歳……年上……っ。近所のきれーなおねーさんにもてあそばれた禁断の愛!?」
 友久は思わず麦茶のビンを落としそうになった。日菜はいったいどんな顔をして言ったのか、うかがうように開けっ放しの冷蔵庫のドアの脇から見ると、満面笑顔、だった。
 友久は麦茶のビンを冷蔵庫に戻して、コップいっぱいの麦茶を半分、一気に飲み込んで、
「……清水、おまえどっからそんな発想が……」
「えー、昨日、そんなネット小説読んだから」
「なんで禁断なんだよ」
「実は! ふたりは血の繋がった姉弟だったから」
「……知らずに近所に住んでんの?」
「そー。親は離婚しててね、弟は父親に連れられて家を出て行ったんだけど、えーと、お父さん再婚して、でも病気で亡くなっちゃって、義理の母親と引越ししてくるの」
「んで、おねーさんが、もてあそぶの?」
「そーそー。そういえばあなた、わたしの弟の年くらいだわ、って。かわいい反面、お父さん取られたみたいに思ってて、その恨みというかなんというか」
「なのに愛……」
「それもまた愛」
 読むならサイトのアドレス教えようか? と言われて友久は、いらね、と答え、でもよく考えたら、
「なに、その話、もしかしなくてエロエロ?」
 じゃあ読む、と興味を示したら母親に殴られた。
 友久はたんこぶができたかもしれない後頭部をさすりながら、
「つか清水、その話、十八禁じゃん?」
「あ、バレた」
 日菜に特に悪気なく、いつもの元気のいい笑顔でおおらかに笑う。そんな笑顔につられて笑いそうになりながら、
「って、おまえまだ十七じゃん」
「もーすぐ十八だもん。数え年十八歳だもん。四捨五入したら二十歳だもん」
「……つって、二十五歳超えてから四捨五入すると鬼のよーに否定するくせに」
 再び母親に殴られて、女性陣には敵わねえ、と、
「オレ、退散」
 麦茶の残ったコップを持って、
「清水ー、オレのばかっぷり話はてきとーに切り上げろよー。あんまばかばか言うと泣いちゃうぞー」
 はーい、と元気のいい返事に、ばか、というくだりをたまにはちょとは否定してくれ、と思いながらすごすごとキッチンを出る。
 話し好きの母親の相手をしていた八歳年の離れた姉は、四年前に嫁に行った。近所の幼馴染は二年前に大学に入ったのと同時に一人暮らしを始めて、実家に帰ってくる回数は年々減ってきている。
「あはは、望月君、ばか、ですねえ」
 自分の部屋に入る直前に、キッチンから大声が聞こえて、これからの母親の話し相手は清水か、こりゃうるさいなあ、と思う。思いながら、なんとなく笑う。それからふと、幼稚園に上がる前にランドセルをねだったことなど覚えてねーや、と思う。というか、覚えていたらそれはそれでなんだか怖い。どんな記憶力だ。
 小学生に上がった頃からの記憶ならある。
 ランドセル……といえば、
『さーちゃん、さーちゃんっ』
 まだ背負いなれていないランドセルは大きくて、友久は道端の小石に躓いてはすっ転んでいた。同じ通学班で、一緒に小学校に行っていた紗穂は、呼べば、慌てて、自分もまだそんなに大きくないからだで抱き上げてくれた。
『ともちゃん、だいじょーぶ? さぁちゃんとおててつなぐ?』
 自分のことを、さぁちゃん、と呼んでいた。
 小学校への行き帰りも、学校から帰って遊ぶのも、年の離れた姉よりも、紗穂と過ごす時間のほうが多かった。
『さぁちゃん、おれ、さんすーわかんない』
 友久が小学二年生のとき紗穂は四年生だった。友久が四年生になれば紗穂は六年生で、わからないことはなんでも教えてくれたから、紗穂にわからないことはなにもないんだと思っていた。
 カラン、と麦茶の中の氷が音を立てるのを見て、友久は時間を確認し、清水、宿題やる気あんのか? とキッチンの光景を思い浮かべた。一応、待っている、という名目で宿題はサボっていた。帰りに買ってきたマンガを読み終えてしまった。紙袋に一緒に入っていた、日菜が買った雑誌を開いた。まだまだ暑いのに、スタイルのいいモデルたちの装いは秋物やら冬物やらになっていて、気が早いなあ、と思う。興味はないけれど暇なのでぱらぱらめくり続ける。雑誌の中の特集に目をとめて、ちょっと真剣に読み始めた。


     ◇


「……ともちゃん」
 とーもーちゃん、と何度も呼ばれて、最後には頬を引っ張られて友久は目を覚ました。眠い目をこすって大あくびをするのを、市松人形のように髪を切りそろえた紗穂に覗き込まれて、そこでやっと、あれ、おれなにしてたんだっけ? という顔をした。
「今度買ってもらったゲーム、つまんなかった? ともちゃん、ゲームの最中に寝ちゃうなんてめずらしいね」
「おれ、寝てた?」
「うん、もっと寝たかったら、おうち帰るか、ベッドでお布団かぶって寝てね。一緒にお昼寝、する?」
「……んー」
 友久は眠そうにぼやぼやとした返事をする。
 紗穂の家で、紗穂の部屋で。
 紗穂はゲームを持っていないので、友久は自分のゲームを持ってきて紗穂の部屋のテレビに勝手に繋げて勝手に遊ぶ。
「寝ないなら、あのね、ちょっと見て見て」
 紗穂は嬉しそうに、友久が見るとも見ないとも言わないうちに、クローゼットから引っ張り出した服を、じゃーん、と自分で口にしながら見せた。
「ほら、紗穂の中学校の制服、届いたんだよ」
 真っ白な丸襟のブラウスに細いりぼん。紺色の、たすきの付いたスカートと上着。
「あー? おれのはー?」
「ともちゃんのは再来年」
「えー」
「ともちゃんはまだ四年生でしょ。あと二年、小学校行かなきゃだよ?」
 ちぇー、と友久はふくれて、ゲームのソフトを入れ替える。
「さぁちゃんもゲームす……」
 ゲームする? と聞くのに見上げた紗穂は、嬉しそうに制服に着替えていた。あんまり嬉しそうで、友久もつられたように笑って、紗穂が着替えるのを見ていた。切りそろえた髪が肩口でさらさら揺れているのがなんだかおもしろかった。



 紗穂が中学生になっても、変わらずに友久は紗穂の部屋に入り浸っていた。ゲームは買ってもらえても自分の部屋にテレビがない。居間のテレビは空いているけれど、話し好きの母親のところにはいつでも母親の友達がやってきていて、邪魔だから外で遊んでおいで、と追い出される。友久も母親たちが賑やかに話をしている横でゲームをやる気にはならなかった。
 今日もゲームの本体を抱えて、自分の部屋のように紗穂の部屋に上がりこむ。紗穂はまだ学校から帰ってきていない。
「おばさーん、さぁちゃんまだぁ?」
 紗穂はあまりゲームをしないから、ゲームをするのはいつもひとりだけれど。部屋にひとりでいるのは落ち着かなくて、友久は夕食の支度を始めている紗穂の母親の手元を覗き込んだ。今夜は魚を煮付けるらしい。
 紗穂の母親は冷蔵庫から手作りのゼリーを出して友久に渡す。友久は自分で食器棚の引き出しからスプーンを出してくる。
「紗穂、運動会の実行委員になったって言ってたから、運動会終わるまではちょっと遅いかもねえ」
「えー」
「ともちゃん、聞いてなかった?」
 友久はちょっと考えて、
「あ、聞いた。けど忘れてた」
 潔い話し方をする友久に、紗穂の母親はおもしろそうに笑った。
「ゼリー、おいしい?」
「んー。これ、さぁちゃんの好きなやつだ」
 オレンジジュースをゼラチンで固めただけのゼリーは、紗穂の家に行くとよく出された。
「おれも好き」
「そう?」
「うん、ぶるぶるしてる」
 友久はスプーンをくわえたまま、
「あ」
 くわえたまま声を上げたのでスプーンを落としたのを慌てて拾って、食べかけのゼリーを紗穂の母親に返した。
「さぁちゃん帰ってきたら一緒に食べる。しまっといて。おれゲームする。あ、その前にジャンプ新しいの、おれもう読んだから持って来る」
 紗穂の家を飛び出して、自分の家から戻る頃には紗穂は帰宅していて、紗穂は友久の持ってきたマンガ雑誌を読む。その横で友久はゲームをする。たまには宿題もする。けれどたいていは遊んでいる。
「ともちゃん、紗穂、この前の号のジャンプ読んでないよ?」
「えー、おれ持ってきたじゃん」
「そうだっけ?」
 と言うので、ちょっと待ってて、と前号を持ってくると、
「あれ。ほんとだ、読んでた」
「ほらみろー」
 今までこんなふうに過ごしてきたから、これからもこんなふうに過ごしていくんだと、思っていた。



 中学生になった友久は、なんとなく、あたりまえのように、紗穂と一緒に学校まで行くんだと思っていた。同じ中学は同じ方向で同じ距離だ。
 けれど中学生の生活が始まってみると、紗穂は決まった友人と登下校を一緒にしていたし、友久は放送委員になって、朝礼のある日は支度のために早く家を出なければならなかったし、何ヶ月も経つ頃には、一緒に学校に行くなんて思いもしなくなっていた。
 それでも、学校から帰れば、
「さぁちゃん、ジャンプ読むー?」
 今日はなぜかそっと顔を出す。紗穂は伸びた髪を揺らして、
「読む。どうしたの? なんでこっそりしてるの? 今日はゲームしないの? それともほかになにかあった?」
 友久はその言葉を待っていたように部屋に入ると、後ろ手に隠していたノートを差し出した。
「宿題わかんないんだけど教えて」
 どことなく、わからないことがあることが許せないような顔をする友久に、
「うわ、ぶっちょーづらだ。前みたいに、もっとかわいく言ってよ。言ってみて?」
 ほら言ってみて、やれ言ってみて、と幼い日々のかわいい友久を期待されて、友久はちょっと泣きそうになった。遊ばれているのはわかった。ので、ふてくされて、
「……ヤならいー」
「ごめんごめん、教える教える。なんでも教える。なになに? わかんないのさんすー?」
 小さな頃の話を持ち出されて友久は顔を赤くする。意地悪をされているわけではない、でも明らかにあからさまにからかわれてはいる。紗穂が相手じゃなければもう一生口なんかきいてやんない、と思った。でも、相手は紗穂、だったから。
 友久はくちびるをとがらせただけで、
「英語」
 紗穂は辞書を引っ張り出す。傍らにはオレンジのゼリーが置いてある。
「英語の訳? あ、ともちゃん辞書引くの遅い。紗穂が引いてあげる」
 紗穂は友久より一生懸命になって辞書を引く。そのうちに、紗穂は、よし、と呟いて教科書を指した。
「わかったわかった、訳でしょ? ここは紗穂流ではね」
「さぁちゃん流はいいから、ちゃんと教えて」
「うわ、ともちゃんかわいくない。ほんとかわいくなくなってきたねー」
「別に、変わってないじゃん。でもかわいいとかゆーな」
「まだ紗穂のが、背、高いもん。ともちゃんはまだまだちいさくてかわいいよね」
「だから、かわいいとかって……」
 かわいいものをかわいいと言ってなにが悪いのか、という顔をしかけた紗穂は、それでも不機嫌な顔をする友久を少しは気にして、
「はい、紗穂のゼリーあげる」
 紗穂の、好きな、ゼリーを友久の手に突っ込む。それは食べかけ、だったけれど、友久はそれなりに紗穂の気前のよさを珍しく思いながら、んじゃ、とゼリーを食べた。
「……って、さぁちゃん、これさあ」
「なあに?」
「いつから置いてあんだよ。温かくなってておいしくない」
「え、そう?」
 なぜか、紗穂は友久から目をそらしたからぴんときた。
「もしかしなくて、おいしくないからオレにくれたんだろー」
「そそそんなわけないよ?」
「うわ、そんなわけあるんだ」
「ないよ、ないない」
 紗穂はきょろきょろと辺りを見回して、友久の持ってきたマンガ雑誌に目を止めて、
「あ、ともちゃん、このジャンプ、紗穂、前の読んでなくない?」
「読んだ、読みました」
「読んでないよ。持ってきて」
「そんなことより、宿題、教えてよっ」
「持ってきてくれたらね」
「はあ!? まじで!?」
「まじで。はい、さっさと持ってきて」
 にっこり、言われて、友久はしぶしぶ一度家に戻る。でも、結局。
「あれ? これ読んでた」
「ほらみろっ」
 勉強をしているより、遊んでいる時間のほうが多かった。
「ともちゃん、ほんと辞書引くの遅いね。練習する?」
 友久の宿題が終わると、紗穂はクロスワードパズルを引っ張り出してきた。
「答えをね、英語で入れるんだって。単語で。ともちゃんタテ担当ね。紗穂がヨコ。ともちゃん終わったら教えて」
 紗穂はマンガを読み出す。友久はどうにも腑に落ちない気分で、
「これってタテとヨコの関係を謎解きながら遊ぶもんじゃないの?」
「タテからだよ。まずタテから」
「……絶対騙されてる気がする」
 それでも友久は辞書をめくり始める。そのうちに、我慢しきれなくなったように紗穂が笑い出した。
 紗穂はいつもかわいらしくわらう。
 でも紗穂はいつも、そんなふうに、笑っていたから。
 今日もそんなふうに笑っているのは友久には当たり前のことだった。
「……さぁちゃん、笑いすぎ」
「えぇ、だって」
 紗穂はふと神妙な顔をして、
「どうしよう、ともちゃん騙されやすいタイプ?」
 困ったね、将来心配だね、という表情をされて、
「そんな心配されなくても、騙されてるの、気付いてるし」
「ほんと?」
「ほんと」
「そうなの? つまんないね」
「つまんなくない」
「えー、つまんないー。かわいくないー」
 だからかわいいとか言うな、と言おうと、したら。
 紗穂がまたおもしろそうに、楽しそうに、笑っていた、から。
 そんな紗穂の笑顔に、友久は辞書をめくる手を止めた。
「ともちゃん、手、止まってる」
 紗穂に指摘されるまで気付かなかったくらいには止まっていて、
「……あれ?」
 なんで、手を、止めたんだっけ? とパズルの問題を読み直した。
 なにかに戸惑う友久に、紗穂はマンガ雑誌を閉じて、ん? と眉を上げた。
「なあに? わかんない?」
「……ううん」
 クイズの答えなら、わかる。わからなくても辞書がある。辞書の引き方なら紗穂が教えてくれる。
 だから、わからないことなんてなにもない、はずだった。



 紗穂の卒業式が近くなったとある朝。
 朝礼が終わって、放送機材を放送室に片付けるのに、友久は校長先生の使ったマイクのスタンドを抱えて歩いていた。
 すぐに一時間目の授業が始まるので急いでいた。急いでいるのに、授業が始まるまでは生徒たちは廊下で遊んでいたりして歩きにくい。
 すれ違った生徒にスタンドの脚をぶつけそうになって避けたら、スタンドの頭を廊下の出っ張りに引っ掛けてすっ転んだ。
 まわりの生徒たちに笑われているのがわかって、顔を赤くしながら立ち上がろうとすると、
「ともちゃん、どっか痛くした?」
 誰も、手を貸してくれない中で、紗穂がマイクのスタンドを抱きかかえる。友久の手を引っ張る。
 紗穂に、手を引かれたくらいじゃ……紗穂の力じゃ、友久は立ち上がれない。
「あ、またともちゃん大きくなった? ちっちゃい頃は、紗穂、ともちゃん抱っこできたのに」
 男の子ってやあねー、と笑う紗穂を友久はぽかんと見上げて自力で立ち上がった。立ち上がってみると、まだ紗穂のほうが背が高い。
 ほんの少しだけ、紗穂は高い場所から見下ろしながら、
「お仕事ごくろーさま。はい。早くしないと授業始まるよ?」
 マイクスタンドを、差し出されて。
 受け取ると、紗穂は友人の元へ駆けていく。なんとなく、見ていると、友人たちと一緒に友久を見て、手を振って、笑った。
 友久の顔は赤いままだった。
 すっ転んだ友久は、まだ他の生徒たちから笑われていた。
 それが恥ずかしかった。荷物を放り出して逃げてしまいたかった、のに。
 紗穂が、笑ってる。
 ……小さな頃から、そばには紗穂がいたから、女の子はみんな、紗穂みたいなんだと思っていた。世話好きで、やさしくて、なんでもできて、かわいく笑う。
 小さな頃は、転んだ友久を抱き上げた。今は、気軽に手を引く。
 その手の華奢な柔らかさ、とか。
 いつの間にか、ずいぶん、非力になっていたこと、とか、が。
 紗穂が笑っているように、紗穂の友人たちも笑っているけれど。
 ……違う。
 ぜんぜん違う。
 他の女子と、紗穂が笑うのとでは、ぜんぜん違う、ような気がした。
 多分、赤の他人から見たらそれはただの、ほんとうにまったく気のせいに違いないくらいに変わらない笑顔でも。
 それは気のせいだ、と説得してみたところで友久には意味がなくて。
 だから。
 紗穂、だけが。
 他の女子と比べると、ずいぶん静かに、かわいく笑った。
 紗穂だけがかわいく笑った。
 紗穂が一番かわいい。
 友久はマイクスタンドを抱えたまま、ますます顔を赤くした。



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