和之は、優しかった。
「おねーさんからキス、してよ」
少し、いたずらするみたいな目、した。私、浴槽に腰掛けたままで、和之、私の前にペタンて座ってて。目線、私のおへその辺で、気持ちよさそうに私の腰に手、まわしてる。
肌の柔らかさ確かめるみたいに、親指で背中なぞる。それだけのことに、ぞくってした。
「キス、してよ」
私、見上げてくる。
私、夕太、思い出した。
不道徳なことしてる。
でも、止まらない。
なんで……?
なんで、なんて、わからなくて。
私、おずおずと唇、近付けた。私の目線よりずっと下にある唇。
和之、目、閉じなくて。私も閉じなくて、唇、重なった。少し、触れるくらい。柔らかい感触して、柔らかいなって思ったことに驚いて慌てて離れた。そしたら和之、私の唇、追いかけてきた。
追いかけてきて、私の唇、舐めた。舌の感触、したと思ったら、いきなり頭、両手でがしって掴まれて、それ以上逃げられなくなって、深いキス、された。
びっくりして、歯、食いしばってたのに、和之の舌がこじ開けてくる。熱い吐息、どっちの? 和之の? 私、の?
「……ん」
息、苦しくなるくらい、キスした。キスとか、そういうかわいいものじゃなかった。お互いの口の中奪い合うみたいに続けた。
和之、だんだん乱暴になってくる。呼吸、させてくれない。苦しくなって突き放した。突き放したのに、またすぐに抱かれた。
立ち上がった和之、私の頭、おもちゃみたいに胸に抱え込んで、目の前、和之の胸で、そこに唇押し付けたら、
「もっとして」
頭の上で和之、囁いた。
「全部、舐めて」
「和……」
「気持ちいい」
私の唇の感触、確かめるみたいに言う。
「……ほんと?」
「ほんと」
私、そっと和之の背中に手、まわして、和之の胸、舐めた。ちょうど胃の辺り。
「もっと、下」
和之のおへそのとこ。
「もっと下」
私、ためらう。私の中に入るはずのものがある。和之、小さく笑った。できないの? って目が覗き込んでくる。
「舐めて」
「でも……」
私、耳まで真っ赤になった。顔、熱い。どうしていいのかわからなくて泣きそうな顔、したみたいだった。
「じゃあ、触って」
手首、掴まえられた。導かれるまま触った。
生々しい皮膚の、感触。
和之の息、漏れたの聞こえた。
「おねーさんの中に入れるんだよ、それ。どんなものか、ちゃんと確かめときなよ」
私、顔、そらした。
「恥ずかしい?」
聞かれて、頷く。笑い声、聞こえた。
私、顔、熱くて。なんだか力抜けて、浴槽からずり落ちそうになるの和之に抱きとめられた。
背、同じくらいなのに。和之のほうが細いくらいなのに。抱きとめられた。
そのまま、和之が私、舐める。手の平も肩も鎖骨も、みぞおちも、
「あ……」
びくんて感じたところ、和之、目印つけるみたいに強く吸った。胸の、下のところ。
そのうちに手、壁につかされて。背中から抱き締められた。
「足、開いて」
和之の指先、腰をなぞるようにして降りてきた。
線をなぞるようにそこに、触れられて、
「ん……っ」
私、壁についてた手の平、握り締めた。
「中指だよ」
耳元で囁く。指の先、ゆっくり入ってくる。私、逃げるみたいに、かかと、上げた。バランス崩して、壁にべっとりもたれる。
「人差し指も」
壁に頬押し付けて、私に起こってること、和之の説明で想像する。
「……あっ…」
私の中、和之の2本の指がなぞる。
さっき、無理矢理したのと違くて……。
「和……之」
「なに?」
「私……」
「僕のこと、感じてる?」
「う……ん……」
うなされてるみたいな声。シャワーに濡れてたからだ、雫が伝っていくのと一緒に、和之の指をたどって、私の中から透明な液、流れてくのわかった。
和之の指が、私の奥にある。私の中で動いてる。
その指、深く、入るのわかって。内壁、わざとこすりながら、また、浅くなる。
「んっ……あ……っ。和之……」
「なに?」
私のこと、楽しむ声。
「いや……和之……」
「なあに?」
じらされてるの、わかった。
私、手の平握り締める。
「イキそう? 指だけで? いいよ。イキなよ」
「いや……。んっ」
ゆっくり動く和之の指に、全部の神経、支配されてるみたいだった。
「いやなの?」
ゆっくりだった動き、急に早くなって、乱暴になって。
「……っん、あぁっ」
胸のほうに押し寄せてくる波、大きくなって、止まらなくて、破裂しそうなくらいドキドキしてきたの、早く、止めて欲しくて。
苦しいの、あのとき、夕太が中にいたときと同じ。
和之の開いていた手が、胸、掴んで。
「和……っ!」
や……やだ、息、できない……。
ヒクって、息、飲んだ、
声、もうでないくらいのどのほうまでいっぱいいっぱいで、
「我慢しなくていいよ」
私、首、振った。
「か、ず……」
苦しくて、手、伸ばして和之探した。
「おねーさん? イけないの?」
私おかしいの、やっと和之、気付く。手、取って、私から指抜いた。
かくん、って私、崩れて、和之に抱きかかえられた。
「やっぱかわいいよね」
ぎゅって、抱き締められたの、よく、覚えてない。
私が、和之の手、掴んだままだったのは覚えてる。
「和……之……」
「はいはい」
しょうがないな、って顔した和之。でも、和之だってもうずっと、そうしたかったのに違いない。
狭い浴室の中で。
もうぬるぬるになってる私に、和之、バックから入ってきた。
「……っ」
和之の、吐息。
「あ……っ」
私の、声。
押し込むように、確かめるように少しずつ入ってくる和之に、私、おかしくなりそうだった。