「ただいま」
私、いつも通りに学校から帰ってきた。そんなふうな、いつも通りの日のはずだった。
「おかえり」
出迎えてくれたの弟の夕太で、
「あ、お父さんとお母さん、夜勤でしょ? 夕飯、作ろっか、手伝ってよ」
「いいよ」
夕太、素直に返事する。でも、なんか、雰囲気、ヘン。
カチャン、て背中で音がして、ビクってして振り返った。夕太の友達、玄関に鍵、かけてた。なんで? そう思いながらとりあえず、
「こんにちは」
こんばんは、かな? って思いながら言う。
「こんにちは」
夕太の友達、ちょっとヘンな顔で笑った。私のこと、じっと見てくる。なんだろ、私、無意識に一歩、後退った。
「夕太……?」
このヘンな雰囲気、説明してもらおうと思った。夕太、なんでもないって顔した。
「ゲーム、してるんだ。夕飯の手伝いもするけど、その前にさ、父さんたちもいないし、ちょっとぐらい騒ぐの、見逃してよ」
「あ、うん」
そうだね、って、私、頷く。
「おねーさんも、ゲームどう? 対戦なんだ」
夕太の友達、私の手、引っ張った。
「あ、僕、和之だよ」
「私は……」
「広美おねーさん、でしょ」
知ってるよ、ってくすくす和之、笑った。
夕太は……和之もたぶん……今年中学に上がったばかりで、私は高校二年生だった。
そんな夏の日だった。
「着替えなくてもいいよ、おねーさん」
和之、私のカバン勝手に私の部屋に投げ込んだ。手、引っ張ったまま、夕太の部屋に連れていかれる。
パタン。扉、閉まって、夕太の陰で和之、おもしろそうに笑った。
「白のセーラー、いいね。うちの中学なんて、女子、ブラウスにたすきのスカートでだっせーの」
和之、
「あ、でも、おねーさんも昔はそれ着てたんだ」
付け足して、私のセーラーのリボン、引っ張った。
「……なに?」
びっくりして、一歩退がった。部屋から出ようとして、和之がドアに立ちふさがった。
「ゲームだよ」
夕太、足元にあったゲームのコントローラー、蹴飛ばした。和之がそれを拾って、少し強く引っ張った。本体からコードが抜けた。
「どうぞ」
コードの抜けたコントローラー、和之が差し出す。促されるまま受け取ろうとして出した右手、強く掴まれた。
「うわ、おねーさん、素直。てゆーか、単純?」
笑いながら、和之、手を掴んだまま、私の後ろに回った。
「なあに?」
「ゲームだよ」
なあ、って和之、夕太に同意求めながら、私、後ろ手にしたまま引っ張った。
「きゃ……っ」
夕太のベットにうつ伏せに倒れ込んで、両手、後ろ手にコントローラーのコードで縛られた。
力、真剣だった。真剣に、縛られた。
「夕太……っ!?」
「騒ぐの、見逃してくれるんじゃないの?」
ギシ、って夕太、ベットに片膝着いた。私のすぐ、横。
「……夕太?」
「なにされるのか、ぜんぜん想像もついてないって顔だね、ねーちゃん」
私のこと哀れそうに、でも、仕方なさそうに笑った。
ちょうど流行りの曲で鳴った私の携帯、スカートのポケットから夕太に取られた。夕太、着信の名前、じっと見る。
「『小川クン』から、だって」
「誰? おねーさんの彼氏?」
「そう、彼氏。付き合い出したの、最近だよね。ね、ねーちゃん」
夕太、そんなふうに聞くけど、本当は確かめる気なんてないみたいに、携帯の電源、切った。どうでもいいみたいに、机の上に乱暴に置いた。
「小川クンとは、もうキスした?」
後ろ手に縛られて自由がきかない。仰向けにされて、夕太に、跨がれた。目が、合って。
……え?
キス、された。弟に……。
「すげ、びっくりしてんの。おねーさんかわいいわ、やっぱり」
「だろ?」
「んん……っ」
何度も唇、押しつけられた。逃げたくて後退さった。
ズルって、シーツに滑った背中には壁しかなくて、
「あーあ、弟とキスしちゃったねえ」
おもしろそうに、キス、ずっと続ける夕太を和之が見てる。
「……ゆう……たっ」
「悪いけどやめないから」
言葉のあいだに、舌、入ってきた。
「いや……っ」
拒んだ途端、口の中に血の味、広がった。
「いってぇ」
夕太、自分の指ちょっとなめて、そこについた血、見た。
「あら、噛まれちゃった」
和之、笑う。
夕太、少しムッとして、血が出てるままの舌で私の耳、なめた。
「いや……、夕太……!」
耳元から首筋、夕太の舌の感触。
「やめなさい、夕太!」
「嫌だね」
舌の傷、痛そうに、
「絶対ヤる」
言って、Tシャツ、脱いだ。
「和之、足、縛っといて」
Tシャツ、和之、受け取りながら、
「縛ったらやりにくいだろ」
言われて、夕太、ああそっか、って顔して、
「んじゃ、おまえ、押さえてろよ」
「僕もおねーさんと、キスしていい?」
「すれば?」
和之が唇、押しつけてきた。
その唇が、耳元で、言った。
「気持ち良くしてあげるからさ、暴れないでよ」
「セーラー脱がせようぜ」
「バカ、着てたほうがやらしーじゃん」
「おまえ、ヘンタイ?」
ふたり、くすくす笑いながらはさみ持ち出してきて、セーラーの下に着てたキャミソール、ストラップと脇、切り裂かれて、脱がされた。ブラジャーは、フロントのホックだけ、はずされた。
ふたりに押さえつけられると、暴れること、できなかった。されるがままで背中に、縛られたままの手、当たって痛かった。
たくしあげられたスカートの中で、下着、一気に引き下ろされた。
「いや……やだ……」
「うるさいよ、ねーちゃん」
「足、きれーですねえ」
和之、内もも掴んで、なめた。
夕太、私のすぐ近くで、
「おれさあ、ねーちゃんとヤりたかったんだ」
「……どうして……」
かろうじての私の質問、夕太、笑うだけで。
滑り込んできた夕太の手に、胸、掴まれた。
乱暴な手、力加減知らない。わし掴みにされて、喉の奥、声が出た。
「っ……痛、い」
「痛いのヤだったら、おとなしくしなよ」
「いやっ」
「あっそ」
胸のさきっぽ、確かめるみたいに夕太、つまんだ。
「痛……っ」
私が痛がるの、夕太、あおってるだけみたいだった。
「なめてみろよ」
和之に言われて、夕太、セーラーの裾、まくり上げた。胸に、舌の感触。
「……っ」
胸を掴む手と、さきっぽ、噛まれて、痛くて顔、しかめた。
「夕太……いやあ……」
喧嘩で、やり込められたみたいだった。やり返す方法見つからなくて、ごめんなさいって泣きながら謝っても、許してくれない。口喧嘩で負けたことないのに。ついこの間まで、殴り合いの喧嘩だって、勝ってたのに。いつも泣いて謝るの、夕太のほうだったのに。
「おねーさんさあ、諦めてさっさと感じちゃったほうがいいよ。濡れてくれないと、痛いよ」
「そんなとこ……触らないで」
和之の指、どんどん上がってくる。膝から、内もも。もっと、上。
「おい夕太、ちょっと足、そっち開いて」
抵抗したって、両足首それぞれに持たれて、私、足、開いた。スカート、お腹の方、上がってくる。
「おねーさん、処女?」
和之、自分の指、なめた。
なめた指、私を、さわった。
「処女だったら、痛かったらごめんね」
「……いや」
「はいはい」
指が……。
「いやあっ!」
いきなり、指が、入ってきた。
他人の指の感触、そんなものが入ってきたのわかって、息が、つまった。
ズクンって、体中、ひきつった。