鈴の花の音(解説)

覚えていたのは、十五歳という自分の年以外には「すず」の二文字だけだった。
三件隣のヤン爺が、曲がった腰がしんどそうに分厚い辞書を引っ張り出してきて「鈴」という文字を探し当てた。
母さんが「スズ」と言いにくそうに口にした後、ちょっと考えて「リン」と呼んだ。

乾いた風の吹く貧しい村でユワンに拾われたリンは、記憶を失っていた。
ユワンの家族に迎え入れられたリンは元気だった。
弟のヨウシュやチェンチーもよく懐いた。
ただユワンだけが、いつもそっけない。