〜 序章 〜
覚えていたのは、十五歳という自分の年以外には「すず」の二文字だけだった。 三件隣のヤン爺が、曲がった腰がしんどそうに分厚い辞書を引っ張り出してきて「鈴」という文字を探し当てた。 文字に見覚えがあったので持っていた鈴をチリチリンと鳴らした。腐りかけた椅子にかけているヤン爺を囲んでいたみんなが、安心したように顔を見合わせた。右の大きい少年から順にユワン、ヨウシュ、チェンチー、父さん。 一番左の母さんが「スズ」と言いにくそうに口にした後、ちょっと考えて「リン」と呼んだ。
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