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セカイ(仮1)
−兄妹設定−





「私たちは、おかしいよね」
 口にすると、少し困ったような、悲しいような、でもなぜかおかしくて仕方がないような、そんな笑みが返ってくる。
 いつも。
 いつも。
 そうやって小さく笑うだけ。
 だから私は、話を変える。
 それまで抱き締めていた肌に、キスをしながら、
「あのね、昨日、飲み会、あったんだ」
「合コン?」
「そー」
 ふーん、と、興味があるようなないような顔をして、私を、見る。
「いい男、いた?」
「ひとり、ね。2コ、上だったかな?」
「あー、27、歳?」
「うん、今度の日曜日にふたりで会うんだ」
「27、かあ」
 見上げると、その目は優しく笑ってた。
 私も、笑う。
 吸い寄せられるように、キスを、した。
「兄さんと、同じ年、だね」


 例えば、隣のお兄ちゃんを「兄さん」と呼んでいるわけではなくて。
「ん……あ、……兄……さん」
 兄さん。
 私の、兄さん。
「……っ」
 同じ遺伝子からできた手が、部屋の空気にさらされていた私の胸に触る。
 同じ、遺伝子から……。
 でも、同じじゃない。
 私と兄さんが、同じわけじゃない。
 アパートの、兄さんの部屋で、唇が触れても、押し付けても、舌を絡めても、混じるのは唾液ばかり。
「古都子……」
 手の平が、胸を包み込む。
 強く、その手で揉まれて、私は声を上げる。
 女の、声。
「……古都子」
 兄さんの声。
 コトコ。
 古都子、でも、ことこ、でもない。
 コトコ。
 そんなふうに、呼ぶ、声。
「兄……さ、ん」
 にじんだ汗で、兄さんの肩を掴みそこねた。
「いや……」
 兄さんを、求める手を。
 兄さんが掴んでくれる。
 掴んだまま、私がねだるように揺らした腰に、体重をかけた。……ねだるように、じゃない。兄さんが、欲しい。
「来て……」
 言葉よりからだが先に反応する。
 でも、そんなのは兄さんも一緒。
 合図するみたいに、キスをする。そうして、
「ひ……ぁ……」
 兄さんの体温。
 私にかかる体重。
 からだが、繋がる。その瞬間、いつも声を飲み込む。そうして兄さんだけを感じる。
 深く入り込んでくるものを感じたくて、目を、閉じる。
 滴るほどに感じていたそこに、兄さんはゆっくりと入ってくる。
 私、早く欲しいのに、兄さんを飲み込もうとするのに、兄さんは抵抗するみたいにゆっくり、入ってくるから。
「や……だぁ」
 じらされるのに抗議する。
 兄さんは優しく、まぶたを舐めた。
「目、開けて」
 いつも、言う。
「僕を見てて」
 目を、開けて、兄さんを見る。
 首筋ににじんでいた汗に触った。
 ふいに、繋いでいたままの手を引き寄せられた。
「……あっ……!」
 兄さんが、奥まで入り込む。
 深いところから湧いてくる快楽に、捕まる。
 それしか考えられなくなる。
 永遠に、この時間の中にいたい。
 ただ、気持ちいいだけでいたい。
「兄さん、動いて」
 掴んだ手を、
「動いて、めちゃめちゃにして」
 手を、掴んだまま、めちゃめちゃにされたかった。
「古都子」
 コトコ。
 カタカタ、ことば、からだの奥で転がる。
「いや、だめ、名前を呼ぶだけなんて、ダメ……っ」
 ダメ。
 でも、呼ばれただけで、感じる。
「兄さん……」
 コノ人ガ、好キデス。
 からだなんて、いくら重ねても足りない。いっそ、ひとつで生まれてきたかった。
 父さんと、母さんと。同じ遺伝子から出来たのに。
 でも、別々の、モノ。
 どんなに、隙間なく繋がっても。
 どんなに、深く、繋がっても。重なっても。
「うん……あ…………っ」
 はじめ、私をいたわるようにゆっくりゆっくり動いていた兄さんは、次第にその動きを早めていく。
 ひとつに、なれないのがもどかしい。
「ねえ、古都子」
「……な、に?」
 ゆらゆら、揺られながら。
 気持ちのよさに、ふわふわ、しながら。
「その男は、上手いかな」
「ど……の……?」
 どの、男?
 言いかけて、思い出す。
「……日よう、日……の?」
「そう」
「う……んっ」
 兄さんへの返事と、兄さんを感じるの、同じ声にしながら、
「嫉妬、する?」
 兄さんよりも、セックス、上手かったら。
 兄さんがするよりも、私が喘いだら。感じたら。
「なんで?」
 兄さん、心の底から言った、から。
「……だよ、ね」
 私、笑った。だって、
「だって、私、兄さんしか、愛シテないし」
「知ってる」
「……本当に?」
「本当に」
 もう何年も続けてきたこんな会話を、兄さんはただ、優しく笑って、流す。
 こんな会話、無意味だから。
 だって、せっかくシてるのに。
 せっかく繋がってるのに。これ以上ないくらい、傍にいるのに。
 そんなこと、どうでもいい。
 どうでもいいこと、言い出したりしないで。
「いじわる……」
 呟いたら、兄さん、動き、止めた。
「や、だ。いじわる……っ」
 止まらないで。
「意地悪はどっちだ」
 すぐ、傍から。
「僕のが上手いって、言うもんだろ」
 私、兄さんにしがみついた。もっと、深く繋がりたい。その場所で、一緒にいたい。
「うん……兄さんが、一番だよ。誰よりも。今までの、どの男よりも」
 ゆるゆると、また兄さんが動き出した。
 その場所の出入りを繰り返す。そのたびに私は悲鳴を上げる。
「あ……あん、……兄さ、んっ」
「僕も……古都子を愛してる」
「う……ん……んっ」
 込みあがる想いが、波になる。ただ押し寄せるばかりの波。
 私に押し寄せただけ、兄さんにも、押し寄せる。
 激しく動かされて、心臓が上擦る。
「あ、あ、あ……っ、ひ、……あ……いく、いっちゃうよ」
 兄さんしか、感じない。
「ん……、ああっ、あ」
 私の爪が、兄さんの背に傷をつくった。
「い、く……やだ、やだ……あ、あんっ」
 いきたくない。そんなことで、終わりにしたくない。
「古都子……っ」
 声に、犯される。
 頭の、奥。
「あ……は、……んんっ」
 兄さんがずっと奥まで入り込んできて、その反動で、私は、
「いや………、あ、いやあ……っ!」
 絶頂に、達してた。
 どくどくと子宮が波打つ。
 ひく、と、喉の奥からからだが引き攣る。
 ……い、や。
 それでも、兄さんはいかせたくなかった、のに。
 気が遠くなるほどの快楽に、繋がってるアノ場所はどくどくと波打って兄さんを弄んで、
「………っ」
 我慢できなくて、兄さんは私を抱き締めながら、いった。


     ◇

以上、です





セカイ(仮2)
−姉弟設定−





「オレたちは、おかしい?」
 自分で言っておいて、自分で、少し困ったような、悲しいような、でもなぜかおかしくて仕方がないような、そんな笑みを浮かべるから。
 いつも。
 いつも。
 そうやって小さく笑うだけだから。
 その答えをわたしに求めてるわけじゃ、ないから。
 だからわたしは、話を変える。
 それまで抱き締めていた肌に、キスをしながら、
「ねえ、昨日ね、飲み会、あったんだよ」
「合コン、みたいな?」
「そー」
 ふーん、と、静かに笑みを消した後、興味があるようなないような顔をして、わたしを、見る。
「いい男いた?」
「ひとり、ね。二コ、下だったかな?」
「あー、ちょうどハタチ?」
「うん、今度の日曜日にふたりで会うんだ」
「ハタチ……ねえ」
 見上げると、その目はわたしだけを見てた。当たり前みたいに、わたしだけを、見てる。
「オレと同じ年だ」
「そう、だねえ」
「まさか、偶然とか言う?」
「偶然、だよ?」
「違うね」
 消したはずの笑みを、また、取り戻しながら、
「無駄なことすんなって言ってんだろ」
 自信、あるみたいに、静かに笑う。
「他の男と、オレを、比べようとすんなよ」
 当たり前みたいに、わたしだけに、キスを、する。
「姉貴には、オレがいればいいんだよ」


 例えば、お隣のお家のお姉ちゃんを「姉貴」と呼んでいるわけではなくて。
 それは、わたしのこと。
 わたし、だけのこと。
「ん……あ、……一登」
 一登、と書いて、かずと。
 わたしの、弟。
「……っ」
 同じ遺伝子からできた手が、部屋の空気にさらされていたわたしの胸に触る。
 同じ、遺伝子から……。
 でも、同じじゃない。
 わたしと一登が、同じわけじゃない。
 アパートの、一登の部屋で、唇が触れても、押し付けても、舌を絡めても、混じるのは唾液ばかり。
「……姉貴」
 掠れた声で呟いて、掠れた声を飲み込んで、
「ちとせ……」
 わたしを、呼び直す。
 千登世、と書いて、ちとせ。
 千登世、と、一登。
 ほら、おかしなくらい、名前を目で見ただけで、わたしたちは姉弟だって、誰にでもわかる。
 わかる、でしょ……?
「……ちとせ」
 一登の、声。
 ちとせ。
 千登世、でも、チトセ、でもない。
 ちとせ。
 そんなふうに、呼ぶ、声。
 呼びながら、手の平が、胸を包み込む。
 強く、その手で揉まれて、わたしは声を上げる。
 女の、声。
「かず……と」
 一登の手が、わたしを求めたように見えて。
 ……求めるから。
 掴んだ。
 掴んだ手を、離したくない。
 離したくなくて、ねだるように腰を揺らした。……ねだるように、じゃない。一登が、欲しい。
「来て……?」
 言葉より、からだが先に反応する。
 でも、そんなのは一登も一緒。
「ちとせ……」
 合図するみたいに、キスをする。そうして、
「ひ……ぁ……」
 一登の体温。
 わたしにかかる体重。
 からだが、繋がる。その瞬間、いつも声を飲み込む。そうして一登だけを感じる。
 深く入り込んでくるものを感じたくて、目を、閉じる。
「ちとせ、もうこんなに濡れてる」
「……ん、だ、って……」
「だって?」
「一登、だって、……すごい、くせに」
「そりゃ、まあ」
 滴るほどに感じていたそこに、一登はゆっくりと入ってくる。
 すごい、くせに。
 まだ、余裕のある顔をしてる。
 からかってるみたいに、笑ってる。
 わたし、早く欲しいのに、一登を飲み込もうとするのに、一登は抵抗しながらゆっくり、入ってくるから。
「や……だぁ」
 わたし、じらされるのに抗議する。じらされて、辛くて、紛らわせたくて、かたく、目を閉じる。
 一登の笑った声、聞こえた。
「目、開けて」
 いつも、言う。
「開けて」
「だ……って……っ」
「オレを見てろよ」
 目を、開けて、一登を見る。
 首筋ににじんでいた汗に触った。
 一登に、触った。
 ふいに、繋いでいたままの手を引き寄せられた。
「……あっ……!」
 一登が一気に奥まで入り込ん出来た。
 深いところから湧いてくる快楽に、捕まる。
 一登に、捕まる。
 逃がしてくれない。
 逃げたいと、思わない。
「ちとせ……言って」
 耳元で。
 一登はいつも、わたしに、言わせたがる。
「……言って」
「や……」
「オレを、じらすの?」
 先にじらしたの、一登なのに。
「おねーちゃんが、弟を、じらすの? 意地悪、すんの?」
「……ずるい……」
 そういう言い方は、ずるい。背中、ぞくってするくらい、ずるい。
 いけないことしてるの、実感して、ぞくぞくする。
「おっきい人が、ちっちゃい人、苛めちゃダメでしょ?」
 そう言って苛めてるの、一登のくせに。わたしのせいにする。
 小さな頃から、変わらない。
 愛想がよくて要領がよくて、欲しいものはなんでも手に入れる。いつでも、当たり前の顔をして。
「ほら、言って」
 ……当たり前の、顔をして。
 小さな頃から、変わらない。
「……んんっ」
 ほんの少し、動いた一登に、わたし、熱くなる。繋がった場所から、指先まで。震え出すの、止められなくて。言っちゃう。
「……動いて、よ」
「なに?」
 ちゃんと聞こえてたくせに、聞き返してくる。
 わたしの泣きそうな顔、おもしろがる。
「一登……」
「ん?」
「一登が……動いて」
 掴んだ、手を、
「動いて、めちゃめちゃにして」
 手を、掴んだまま、めちゃめちゃにして。
「ちとせ」
 一登は、笑う。嬉しそうに、子供みたいに。
「……ちとせ」
 嬉しそうに、でも、まだ、動かない。
 ちとせ。
 いつでも、少し言いにくそうに言う声。小さな頃から、そうやって呼ぶ声、慣れたように、からだの奥に入ってくる、けど。
「いや、だめ、名前を呼ぶだけなんて、ダメ……っ」
 ダメ。
 でも、呼ばれただけで、感じる。
「一登……」
 一登を、感じる。
 からだなんて、いくら重ねても足りないくらいに。いっそ、ひとつで生まれてきたかったくらいに。
 そう言うと、
「ひとつに生まれてきたら、ちとせを抱けない」
 父さんと、母さんと。同じ遺伝子から出来たのに。
 でも、別々の、モノ。
「ちとせを抱いて、こうやってひとつになってるほうがいい。気持ちがいい」
 どんなに、隙間なく繋がっても。
 どんなに、深く、繋がっても。重なっても。
 ひとつにはなれない。
 でも、違うものだから、重なり合える。
「うん……あ…………っ」
 はじめ、わたしをいたわるようにゆっくりゆっくり動いていた一登は、次第にその動きを早めていく。
 別々の人間で、だから繋がれるけど、だから、相手を欲しいと思うのだけれど。
 それでもやっぱり、ひとつになれないのがもどかしいみたいに。
「ねえ、ちとせ」
「……な、に?」
 ゆらゆら、揺られながら。
 一登の感触に弄ばれながら、
「その男は、上手いかなぁ」
「ど……の……?」
 どの、男?
 言いかけて、思い出す。
「あ……日よう、日……の?」
「そう」
「う……んっ」
 一登への返事と、一登を奥に感じるのを、同じ声にしながら、
「嫉妬、する?」
 一登よりも、わたしを上手に抱いたら。
 一登がするよりも、わたしが喘いだら。感じたら。
「なんで?」
 一登、心の底から言った、から。
「……だよ、ね」
 わたし、笑った。だって、
 一登だけ。
 本当に、ほんとうに。
 もうずっと、一登しか感じないくらいに、一登、だけ。
 そんなこと、言葉にしなくても、わかってるでしょ?
「当たり前だろ」
「……うん」
「当たり前、だろ」
「うん」
 もう何年も続けてきたこんな会話を、一登は、怒ったみたいに、する。
 今さら、なに言ってんの?
 そんなふうに言いたそうに。
 実際に、そんなことを口にして。
「ちとせ、だけ、なんだ」
「……うん」
 うん。
「一登、だけだよ」
 怒ったみたいに、それでも、確認する。
 何度でも。
 何度、でも。
 本当は、こんな会話、無意味なのにね。
 だって、せっかくシてるのに。
 せっかく繋がってるのに。これ以上ないくらい、傍にいるのに。
 確認なんて、しないで。
「いじわる……」
 呟いたら、一登、動き、止めた。
「や、だ。いじわる……っ」
 止まらないで、って思わず言ってた。
 一登は、わたしが、愛しくてたまらない顔をした。一登を欲しがるわたしに、大切そうに触って、それから、思い出したみたいに意地悪に笑った。
「意地悪はどっちだよ」
 すぐ、傍から。
「オレのが上手いって言えばいいんだよ」
 すねる、から。
 ……かわいい。
 なんて、そんなこと言ったら、またすねる?
「一登……」
「……なんだよ」
「一登を、愛してる」
 一登、わたしを抱き寄せた。
 わたし、一登にがみついた。もっと、深く繋がりたい。その場所で、一緒にいたい。
「……一登が、一番だよ。誰よりも。今までの、どの男よりも」
 言葉に、満足したみたいに、ゆるゆると、また一登が動き出す。
 ゆるゆると、でもすぐに、忙しなく。
 その場所の出入りを繰り返す。わたしは悲鳴を上げる。
「あ……っ、……一、登っ」
「オレも……ちとせを愛してる」
「う……ん……んっ」
 想いが、波になる。押し寄せるばかりの波。
 わたしに押し寄せただけ、一登にも、押し寄せる。
 激しく動かされて、心臓が上擦った。
「あ、あ、あ……っ、ひ、……あ……いく、いっちゃうよ」
 一登しか、感じない。
「ん……、ああっ、あ」
 わたしの爪が、一登の背に傷をつくる。
「いく?」
「い、く……やだ、やだ……あ、あっ」
 いきたくない。そんなことで、終わりにしたくない。
「ちとせ……」
 声に、犯される。
 頭の、奥。
 からだの、奥。
 生々しい一登の感触。
「あ……は、……んんっ」
 一登は、腰を大きく退いて、かと思うとずっと奥まで入り込んでくる。それを何度も繰り返されて、わたしは、我慢、できない。
 一登は、わたしをよく知ってる。
 どうすればどんな声を出すのか。
 どんなふうにするのがいいのか。
「ちとせ、イって」
「……や、だぁ」
「うん……」
 わたしがそれ、嫌がるの知ってて、でも。
「でも、いって。オレにめちゃめちゃにされて」
「……一登、かず……」
 めちゃめちゃに、息も出来ないくらい攻め立てられて、わたし、
「いや………、あ、いやあ……っ!」
 絶頂に、達してた。
 どくどくと子宮が波打つ。
 ひく、と、喉の奥からからだが引き攣る。
 ……い、や。
「一登ぉ……」
 一登はいかないで。ずっと、ここにいて。
 伝えたいのに、声が言葉にならない。
 気が遠くなるほどの快楽に、繋がってるアノ場所はどくどくと波打って一登を弄んで、
「………っ」
 我慢できなくて、一登も、いった。



     ◇

以上、です




別窓で開いています。読み終わったら閉じてください