10.14(水曜日) ちょうど一年前の(といっても10月15日付)
ファイルの整理をしていたら、ちょうど一年前に書いていたらしーものが出てきました。
うわ、すっごい覚えてない。
以下、なんかお話みたいなもののでだし。
※ 中途半端(いつもどおり)
キンモクセイ
つぶつぶしたオレンジ色の芳香を、胸いっぱいに吸い込んで吐き出す。
むせ返るほどのキンモクセイの香りの、真横を通り過ぎた。
むせ返るほどの香りは、キライ、じゃなかった。
好き、だった。
だから、その木、のそばの、香る空気をビニール袋につめて、持ち帰ってみた。
そんな話をしたら、
「……匂いを? 持って帰れたの?」
あきれたように、ばかにしたように、は、と彼が笑った。
だから、ばかに、されたんだと、単純に思った。ばっかじゃないの、と言外にほのめかされた気がして、実千(みち)は、肩にもたれかかってくる彼を力任せに押し退けた。
公園の、ベンチの、向こう側に、彼がばったり倒れる。そのままの体勢で、もう一度聞かれた。
「持って帰れたの」
ひとりごと、みたいだった。
ばかに、して笑い続けるわけでも、疑問形でもなかった。
公園の遊具ではこどもが遊んでいるのに、公園を抜け道にする学生が自転車で通っていくのに、ひとは、いるのに、みんな、周りには無関心で。実千はなんとなく、ここに自分ひとりだけでいるような気分になる。
でも、横を、見れば、彼が、いるから。
ひとりごと、みたいに、
「持って帰れた、よ」
ひとりごと、だったらどうしようかと思いながら、
「ちゃんと、いい匂いしたよ。一瞬、だったけど」
自分の部屋の中で香った香りを思い出して、笑った。
「うちの近所にキンモクセイないから、自分の部屋で、その匂いがするのがなんか、不思議だった」
公園の植え込みには、ところどころにある木を、見て、深呼吸する。
濃い緑色の葉と、つぶつぶオレンジの花の、甘ったるい香りを吸い込む。
「好き、なんだ」
彼がまた、ひとりごとみたいに言った。彼を見れば、ベンチ半分の狭い場所に不自然な格好で横になったまま、遊ぶこどもを見ている。
実千は意外そうに、
「え、こども、好きなの?」
「なんでそんな意外そうに言うの」
少し、声のトーンが落ちたのは、不機嫌、になったからか。なんだかよくわからないけれど、ごめんね、と言えば、
「違うよ」
「なにが?」
「こども、のはなし、じゃない」
実千は公園を見回した。
「じゃあ、人妻好き?」
今、公園にいるのは、子供と、その母親が、ひとくみ……ふたくみ。どちらの母親もまだ若くて、かわいい。実千から見れば、どちらも子持ちのおばさん、だけれど。
「んー、あのお母さんたちが趣味なら、いい趣味、かも」
よくわからないけれど、適当に言ってみる。彼はまた、違うよ、と言った。
「僕の好みじゃなくて、実千が、キンモクセイ、を」
そう言えば、
「その話をしてたんだっけ」
「その話をしてたんだよ」
キンモクセイの、香りの話を。
「なんでこどもとかの話になるんだよ」
「だって、こどもばっかり見てたでしょ」
「実千が、僕を力尽くで押し退けたりするから、仕方なく、不可抗力で、目線がそっちを向いてただけ」
「だって、黙ってるとすごい近付いてくるんだもん」
「好きなら、いいかと思って」
「……誰が、なにを」
「実千が、キンモクセイの香りを」
よっこいしょ、と起き上がって、
「僕も、キンモクセイの香り、するだろ」
匂いを、確かめてみて、と近付いてくる。
実千はのけぞって避けながら、
「その、そもそもなんでそんな香りがするの? なにそれ香水? とか、そういう疑問は置いといて、その匂いはキライ。偽物の香りは嫌い」
「なんで偽物って決め付けるの」
「本物じゃなければ偽物だよ。ていうかそれよりそんなことより」
のけぞりすぎてベンチからずり落ちそうになって慌ててバランスを取った腕を、掴まれた。
鼻を突いたのは、彼の、香り。
彼からずっと、ずっと、花の、香りがする。
キンモクセイの香りに、似ている。
でも、違う。
偽者と言ったら、どこか、つまらなそうな顔をした。すねているのか、怒っているのかわからない、けれど。
とりあえず、彼の感情は、いまは、どうでもいい。
どうでもよくないのは、彼。
彼、自身。
ていうかそれよりそんなことより。
「あなた、どこの、誰?」
気になるのは、彼の、素性。
以上。
ホントにおまえだれだ。的な。
キンモクセイの精かな(そんなバカな)
題からしてなんかなげやりです。
彼がどこの誰だか謎です。……だれかな。
句読点が明らかにおかしい気がします。いつもですねそうですね。
キンモクセイ、と、あと、みつまた、というファイルがありました。……みつまた。多分、木の、みつまた、かと(三行くらい女の子が怒ってるだけの描写が……???)。
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