9.30(火曜日) …………きっと確実にボツなおはなし。
ボツ話晒し。そのいち(といってもそのさんまでしかありませんすみません)
今日の秋谷さん
1.秋谷さんはこんなひと(1)
××建設株式会社勤務、秋谷ちひろさん、はこんなひと。
「すいませーん、営業部ってこちらでよかったっすかー?」
初めて見る顔の、どこかの取引先業者の新人が、微妙な言葉遣いで元気よく事務所にやってきた。
「この書類、事務員さんのアキヤさんに届けろって言われたんですけどー」
書類の入った茶封筒をひらひらと頭上で振って見せる。
秋谷さんはパソコン画面から目を離すと、
「△△会社の方ですか?」
と確認をする。そーでーす。という返事に席を立つ。
新人営業マンは、秋谷さんを下から上へと遠慮なく眺めた。
秋谷さんは今日もいつも通り、紺色の事務服に白のブラウス。少し明るくした髪はさらさらのショートカットで、口紅はベージュ系。
新人営業マンは高めの点数を付けた様子で、
「あ、アキヤさん、っすか?」
にっこり、頭ひとつ高い場所から尋ねる。
「……はあ」
秋谷さんは、なにか言いたそうに新人営業マンを見上げる。が、結局何も言わずに、ご苦労様、と茶封筒を受け取った。新人営業マンを見送って、席に着く。
秋谷さんはいろいろなひとに、なかなか訂正できないままでいることがある。
『あの、わたし、アキヤ、じゃなくってアキガヤです』
アキタニでもありません。とどうも言えない、らしい。
秋谷ちひろさんは、こんなひと。
|