〜 セカイ 6 〜



「んん! んぁ、あ、あ! 兄さ……っ」
「もっと呼んで」
「兄、さ……んっ、あ……や……っ」
「……っ、もっと、呼んで。僕だけを見て」
 深いところに響く衝撃に、離れそうになった手、掴まれた。
 繋がった場所……。
 ……ん、だめ……。
「だ、め、……あぁあ! 兄さん、兄さん! や……! もう……っっ」
「……もう、なに?」
 兄さん、掴んだ私の手、引き寄せて、
「なに? コトコ……どうしたい? どうされたい? ……言って」
「やぁ……ん、んっ、も……許、して……」
「許す?」
 どんなふうに? 囁いて、腰、押し付けられて……!
 兄さんと私、隙間なんてないのに、
「やっ……! だめぇ、兄さ……あ! 許し……許して、も、う……っ!」
 あふれ出てくるぬめりも、声も、止まらない。
 どくん、て、流れるぬめりに、
「……おまえの、中は、熱いね。こんなに熱かった? あのときも? ……どうだったかな、覚えてない……もっと、味わっておけばよかったね。こんな……ふうに」
「んっ……熱、いよ」
 兄さんも、熱い。
 だから……。
 ……あ……。
「おね、がい……。兄さ……、言って」
「なんて? ……なんて、言って欲しい?」
「っあ! は……んっ! いい……って。私……よくて……いっちゃう」
「僕は、いい? そんなに?」
「ん……。いい……よ」
 溢れてた涙、よくて……兄さんが、気持ちよくて、また、溢れる。
「ずっ……と、兄……さん、と、したかった。……あ、こ、んなに……」
 こんなに、
「気持ち……いい、よぉ」
 こんなにいいなんて……思ってなかった。
「……ああ! あ……んぁ……んんっ!」
「……僕も、いいよ。ずっと、こうしてたい」
「だ……っ、や、だめ……あん! も、許して……言って……いいよって……」
 イって、いいよって……言って。
 言われなくても……もう……っ。
 ……限界、だった。
 どくん、て、ソコが兄さんを締め付ける。その波を抑えられない。
「あ……っ! あ、ぁあ! 兄さん……!!」
 繋がる手に力を込めた。
 いく……だめ、もう、いっちゃう……!
「コトコ……」
 兄さん、私の手、口付けた。
「っ……限界、だね。おまえも……僕も……っ」
「ん……っ」
「イって……、いいよ。一緒にイこう。いい子だね、よく、我慢したね……」
 激しく動いてた兄さん、動きが止まった、かと思うと、ぐ、と、押し込められて。
「……あ」
 兄さんの動きに、翻弄される。
 一瞬止まった兄さんに、私のからだ、安堵した途端、また、ねじ込まれて。
「……あ、あ」
 一気にやってくるはずの波、じわじわと……。
「あ……ひぁ……っっっ!!」
 最後の悲鳴、まるで声にならなかった。
 声に、ならない分、行き場のない快楽は兄さんに爪を立てた。
 爪を立てる。
 締め付ける。
「……おまえは、そうして僕を離さない気……?」
 それもいいね、と。
 兄さんは私の奥で、達っした。
 ……幸せだった。
 幸せだと、思った。
 だから涙が止まらないんだと思った。
 私と兄さんはまだしばらくそうして繋がったまま。
「そんなにヨかった?」
 兄さんは、私の涙に、そんな理由をつけた。
 ……うん。
 涙なんて、そんな理由だったかもしれない。
 よかっただけ。
 気持ちが、よかっただけ。
 それだけ。
 それだけの、涙。
「……よすぎて、離したくない……」
「……僕もだよ」
 言いながら兄さん、私の中で……また……。
「…………っ……あ……兄さん……」
 兄さん、私の背中、床に、押し倒した。
「もっと、させて」
 時間、確認して。
「もう一回、させて」
 兄さん、ゆるゆると動き出す。
「……兄さ……兄さん……っ」
 この、セカイで。
「兄さんは……私の、ものだね……」
「おまえは、僕のものだよ」
「……めちゃくちゃに、して……いいよ?」
「知ってる……」



 ……知ってる。
 全部、ちゃんと、知ってる。
 この、セカイで。
 この部屋でだけ、繋がることができる。
「コトコ……」
 呼ぶ声に、揺られる。

 ねえ、兄さん。
 私が兄さんを許さないセカイで、兄さんはどうやって生きていく?

 兄さんは、
「こうやって、生きていくよ」
 と、答えた。
 また、私を絶頂に押し上げながら。
「僕を許したりしたら、許さないよ」
 私は、絶頂に押し上げられながら……。
 四角い天井を眺めた。
 ……ここだけの、セカイ。 
 ここだけの、セカイで。
 深く深くキスをして。
 同じ遺伝子を絡めて。
 ふたりが、ひとつになって。
 そうして、
 ひとつが、ふたりになる。
 鍵を開けたドアの向こうに、宮澤さん、立ってた。
 全部、わかってる顔して、小さく、優しく笑う。
 笑われて、私、兄さんの部屋、振り返った。
 部屋……ただの、部屋。
 宮澤さんが耳元で、
「まだ物足りない顔、してますよ、お嬢サン」
 私、兄さんの部屋から目、そらした。
 宮澤さんを見上げる。
「……一番極悪なのは策士宮澤サン、に五千点」
 宮澤さん、五千点がなにを基準にした点数なのかしつこく聞いてきたけど、そのうちに諦めて、
「ま、お疲れさん」
 私の頭、撫でた。
 宮澤さんも兄さんみたいだね、って言ったら、それに兄さん、対抗するみたいに私の頭、撫でた。
「古都子の兄さんは、僕だけだよ」
 ドアのこちら側は、こんな、世界。


 こんな世界、だから。

『こうやって、生きていくよ』


〜 おわり 〜