「んん! んぁ、あ、あ! 兄さ……っ」
「もっと呼んで」
「兄、さ……んっ、あ……や……っ」
「……っ、もっと、呼んで。僕だけを見て」
深いところに響く衝撃に、離れそうになった手、掴まれた。
繋がった場所……。
……ん、だめ……。
「だ、め、……あぁあ! 兄さん、兄さん! や……! もう……っっ」
「……もう、なに?」
兄さん、掴んだ私の手、引き寄せて、
「なに? コトコ……どうしたい? どうされたい? ……言って」
「やぁ……ん、んっ、も……許、して……」
「許す?」
どんなふうに? 囁いて、腰、押し付けられて……!
兄さんと私、隙間なんてないのに、
「やっ……! だめぇ、兄さ……あ! 許し……許して、も、う……っ!」
あふれ出てくるぬめりも、声も、止まらない。
どくん、て、流れるぬめりに、
「……おまえの、中は、熱いね。こんなに熱かった? あのときも? ……どうだったかな、覚えてない……もっと、味わっておけばよかったね。こんな……ふうに」
「んっ……熱、いよ」
兄さんも、熱い。
だから……。
……あ……。
「おね、がい……。兄さ……、言って」
「なんて? ……なんて、言って欲しい?」
「っあ! は……んっ! いい……って。私……よくて……いっちゃう」
「僕は、いい? そんなに?」
「ん……。いい……よ」
溢れてた涙、よくて……兄さんが、気持ちよくて、また、溢れる。
「ずっ……と、兄……さん、と、したかった。……あ、こ、んなに……」
こんなに、
「気持ち……いい、よぉ」
こんなにいいなんて……思ってなかった。
「……ああ! あ……んぁ……んんっ!」
「……僕も、いいよ。ずっと、こうしてたい」
「だ……っ、や、だめ……あん! も、許して……言って……いいよって……」
イって、いいよって……言って。
言われなくても……もう……っ。
……限界、だった。
どくん、て、ソコが兄さんを締め付ける。その波を抑えられない。
「あ……っ! あ、ぁあ! 兄さん……!!」
繋がる手に力を込めた。
いく……だめ、もう、いっちゃう……!
「コトコ……」
兄さん、私の手、口付けた。
「っ……限界、だね。おまえも……僕も……っ」
「ん……っ」
「イって……、いいよ。一緒にイこう。いい子だね、よく、我慢したね……」
激しく動いてた兄さん、動きが止まった、かと思うと、ぐ、と、押し込められて。
「……あ」
兄さんの動きに、翻弄される。
一瞬止まった兄さんに、私のからだ、安堵した途端、また、ねじ込まれて。
「……あ、あ」
一気にやってくるはずの波、じわじわと……。
「あ……ひぁ……っっっ!!」
最後の悲鳴、まるで声にならなかった。
声に、ならない分、行き場のない快楽は兄さんに爪を立てた。
爪を立てる。
締め付ける。
「……おまえは、そうして僕を離さない気……?」
それもいいね、と。
兄さんは私の奥で、達っした。
……幸せだった。
幸せだと、思った。
だから涙が止まらないんだと思った。
私と兄さんはまだしばらくそうして繋がったまま。
「そんなにヨかった?」
兄さんは、私の涙に、そんな理由をつけた。
……うん。
涙なんて、そんな理由だったかもしれない。
よかっただけ。
気持ちが、よかっただけ。
それだけ。
それだけの、涙。
「……よすぎて、離したくない……」
「……僕もだよ」
言いながら兄さん、私の中で……また……。
「…………っ……あ……兄さん……」
兄さん、私の背中、床に、押し倒した。
「もっと、させて」
時間、確認して。
「もう一回、させて」
兄さん、ゆるゆると動き出す。
「……兄さ……兄さん……っ」
この、セカイで。
「兄さんは……私の、ものだね……」
「おまえは、僕のものだよ」
「……めちゃくちゃに、して……いいよ?」
「知ってる……」
……知ってる。
全部、ちゃんと、知ってる。
この、セカイで。
この部屋でだけ、繋がることができる。
「コトコ……」
呼ぶ声に、揺られる。
ねえ、兄さん。
私が兄さんを許さないセカイで、兄さんはどうやって生きていく?
兄さんは、
「こうやって、生きていくよ」
と、答えた。
また、私を絶頂に押し上げながら。
「僕を許したりしたら、許さないよ」
私は、絶頂に押し上げられながら……。
四角い天井を眺めた。
……ここだけの、セカイ。
ここだけの、セカイで。
深く深くキスをして。
同じ遺伝子を絡めて。
ふたりが、ひとつになって。
そうして、
ひとつが、ふたりになる。
鍵を開けたドアの向こうに、宮澤さん、立ってた。
全部、わかってる顔して、小さく、優しく笑う。
笑われて、私、兄さんの部屋、振り返った。
部屋……ただの、部屋。
宮澤さんが耳元で、
「まだ物足りない顔、してますよ、お嬢サン」
私、兄さんの部屋から目、そらした。
宮澤さんを見上げる。
「……一番極悪なのは策士宮澤サン、に五千点」
宮澤さん、五千点がなにを基準にした点数なのかしつこく聞いてきたけど、そのうちに諦めて、
「ま、お疲れさん」
私の頭、撫でた。
宮澤さんも兄さんみたいだね、って言ったら、それに兄さん、対抗するみたいに私の頭、撫でた。
「古都子の兄さんは、僕だけだよ」
ドアのこちら側は、こんな、世界。
こんな世界、だから。
『こうやって、生きていくよ』