くらくらする、んだよ。
キイ兄にシャツ脱がしてもらって、シャツ脱がしたその手が、また、ぐりって、乳首触る。
「……んっ」
なんで、こんな声出ちゃうくらい、へんな感じになるんだろ。びくんって、なにかからだの中、通り抜けて、おかしくなる。
「みー、ここ、気持ちいい?」
「う……ん」
これが、気持ちいいっていうなら。
なんか、初めての感覚、言葉にして、「気持ちいい」って言うのが正しいなら、これ、間違いなく、
「……気持ち、いい……」
弾いた弦みたいに、からだ、震えるんだよ。
キイ兄が、してくれるから?
キイ兄、だから?
あたし、キイ兄に、抱きついた。
もう、だめ。限界な感じ。
ボタンなら、あたしだって、外せるから。
「みー、こら」
キイ兄の言う事なんか聞かないで、キイ兄に馬乗りみたいになって、ボタン外して、あらわになった肌に、口接けた。
キイ兄は。キイ兄のお腹のとこにまたがって座ってるあたし、触った。もどかしくて、スカートのホックは自分で外した。一緒に、最後の下着も脱いだ。
限界って。
キイ兄も言った。
そりゃそう、だよね。
あたし、キイ兄欲しくて。
あたし10才くらいのとき、キイ兄、あたしくらいで。あたしがキイ兄欲しいと思うみたいに、キイ兄も欲しいと思わなかったわけ、ない。
からだ起こしたキイ兄のひざの上に座って、キイ兄、あたしの胸のとこ、顔、埋める。
胸のとこ。さっき、感じたとこ。吸われて、
「ん、んっ……!」
初め、指で弄んでただけの乳首、噛んだから、
「キイ、兄……っ。っ……あ」
びくん、て、さらに感じたのにも、そのときの自分の声にもびっくりした。
「ねえ、……ねえっ、キイ兄……」
「……なに?」
「……こまで?」
「ん?」
どこまで、気持ちよくなる? もっと? うそ、だって、我慢できない。ほんとに、おかしくなっちゃうよ。
「……あっ、……ん」
「みー、みぃ」
あたし、自分の声にびっくりして口、手で押さえたの、キイ兄、いさめるみたいにキスせがんできて、キスするのに手が、ジャマで、
「あ……はぁ……」
キスの合間に、キイ兄の手の動きに合わせて、声、出した。声、っていうか、
「……は……ん、はぁ」
声っていうか、息。
どうしとけばいいのか分からない腕、キイ兄にしがみついて、
はぁはぁって上がってく息、どうしていいのかもわからなくて。
気が付けばキイ兄の腕に支えられながら、あたし、横になってて、
「んんっ!」
わざと、太一がつけた跡と反対側のわき腹から下がっていった手、初めにキイ兄が意地悪に指、突っ込んだところ、なぞるように触られて、のけぞった。
うそ、やだ。
さっきはこんなに感じなかったのに。
「ヤ……だ、んんっ……!」
なんていうかこの感覚に耐えられなくて、もうどうにも、我慢できなくて、顔、手でおおった。
「……みー?」
気遣う声。でも、手、止めないから。
指、するりと探し出した場所にもぐりこんでいくから。
その感触、
「っあ、あっ……」
声、出るんだけど、ほんとに、反射的に、今までされるがままに投げ出してた足、閉じて、ひざ、立ててた。キイ兄、慌てて手、引っ込める。
「た……」
「た?」
「たいむぅー」
自分でも、かなり、タイムとかしてる状況じゃないんだけど。
ましてキイ兄にいたっては、拷問に近いタイムにだったと思うけど。
あたしも拷問なんですぅ。
「みぃ?」
「……ヤダ」
「みぃ」
「いやぁ」
ぶんぶん首振るの、キイ兄、両手で挟んで止めて、キス、した。
キイ兄がキスする。
キイ兄が、キスする。
キイ兄が、キス、する。
「みー」
あたしの名前だけ呼ぶ。
「みー……」
「……ん、んっ」
そうされるだけで、なんか、大事なもの、吹っ飛びそうになった。
えーと、理性とか、ええええと、ハジライは、まだ、拾ってきてなくて。
「みー、みぃ。足、開いて」
キイ兄、力ずくでそうしようとはしなかった。力ずくなら多分、簡単に出来ること。
「……みー」
おねがい、するみたいに。
懇願、するみたいに。
「足、開いて」
「や……」
「痛く、しないから……多分」
多分、ていうのが、なんかすごく、現実っぽかった。
キイ兄は、多分、優しくしてくれる。キイ兄には、痛くする気なんてない。
……あたし、ひざの力、緩めた。
「……キイ兄ぃ」
足、開いたソコに、キイ兄の、指じゃなくて、押し当てられたもの。
「ん……、ふ……キイ……」
……キイ兄。
ぐ、と押し込まれる感覚。もう、まったなしで。
「あっ……」
キイ兄の……。
「……あっ、あ、やっ……」
「みー……みー」
キイ兄が、あたしの髪、撫でる。
「……みー?」
あたしを気遣う。大丈夫か? って。痛くないか? って。
「……っ。だ……」
大丈夫、だよ。痛くない。
ただ、くらくらするだけ。
キイ兄の感覚に、くらくらするだけ。
あたしもしたくて、キイ兄もしたかったんだよね?
だから、あたしの中に入ってくるモノ。それを感じて、くらくらする。
キイ兄の、息遣い。降ってくる。入ってくるたびに、荒くなる。
「あ、あ、……キイ、兄……キイ兄……?」
「……な、に?」
「……んんっ。……て、ね」
教えて、ね。
「全部……? ん……あっ」
全部、入ったら、教えてね?
全部が、一緒になれたとき、教えてね。
キイ兄、ぜんぜん、あたし、声になってないのに、わかったみたいに頷いてくれた。
「も、少し……」
ぐらって、頭の中傾いたみたいだった。
もう、いっぱいいっぱいの感覚、なのに、まだ、ある。永遠に終わらないみたいな感覚。でも、それでもいいや、って、思ったりする感覚。
そのうちに、キイ兄の動きが止まった。
なんにも言わなかったけど、それが、合図。
「キイ兄……キイ兄……っ」
ぎゅって、したかったんだけど、キイ兄、それ待てないみたいに動き出した。
「あ、やだ、まって……っ」
「……ダメ」
ダメ、とか言うしー。
「や、やだっ……あっ、あ、んんんっ!」
ゆっくりゆっくり動く。ゆるゆると引き抜いては、押し込んでくるから。
「だめ、だ……め、ね、キイ兄……っ」
ぎりぎりと繋がった場所からなんか、こみ上げてくる感じ。ぎりぎり、じりじり、意地悪みたいに、じわじわ。
「……キ……兄……っ!」
「みー、もっと感じて」
やだ、感じて……、
「あ、ん、感……じて、る、よ」
感じてるよ。気持ちいいよ。
動くキイ兄、わかるよ。それじゃ、ダメなの? もっとって、どんなふう?
「……まだ」
「な、なななに……が……?」
「まだ、ハジライ拾ってこなくていいから」
キイ兄、耳元、言葉寄せた。
「もっと喘いで」
「やーだー」
って、一応、言った、んだけど。
これでも? って感じで、ぐ、って入ってきて、
「あっ……! あっあっ!」
からだ中、のけぞった。
キイ兄、満足げな顔、教えた問題きちんと解いたときみたいで、
「……ほら、みろ」
やればできる、って。
勉強じゃないのにー。
「ああ……はぁ……、ん、う……んんっ!」
これって、あれ、だよ。よくって、おかしくなっちゃいそうで、悲鳴の最後のとこ、両手で口、塞いだら、キイ兄に引っぺがされた。
塞げなくなって、
「あん! やだぁ……んっんっ、は……ぁんっ!」
やだー、自分のこんな声ー。
「いいから、……もっと、聞かせて」
「んんっ……! ……キ、兄……も」
キイ兄も、聞かせてよぉ。
「おれのは、だめ……」
「ずーるーいー」
意地でも聞かせない、って感じで、声、飲み込むキイ兄ののど、触った。
肉付き、薄い。のどぼとけ、とか。ほんとは上げそうになる声、飲み込む動き、とか。
そのまま、のど、なぞったら、キイ兄が、ふいっと表情しかめた。
切なそうな、感じ。
それって、あたし、のせい?
あたしがキイ兄、触ったから?
えへへ。とか、ちょっぴり勝ち誇った顔、バレた。
「うわあっ……。やだ……ヤダ、ん……ん……やっ、やぁっ……!」
キイ兄の動き以外のことなんて、考える暇、もう、キイ兄、くれなくなった。
「っあ、あ……キイ、兄? やだ、やめて……よぉ。ほんとに……あ、はあっ……かしく……」
おかしく、
「……っちゃう、よぉ」
おかしく、なっちゃうよぉ。
「いいよ、どうぞ」
「あぁんっ……!」
キイ兄、キイ兄、キイ兄……っ。
キイ兄が、あたしの頬、触った。
そんだけのこと、感じて、
「……ん」
息、飲み込んだの、キイ兄が笑った。
「かわいいなあ」
そのひとこと、ずくん、て、からだ、走った。胸のとこ、波打ったみたいな感じした。
「ひぁっ!!」
その感覚に驚いて、目、閉じたの、キイ兄、
「かわいいって言うと、感じるんだ?」
それもまたかわいいなあ、って感じで。
「……だ、だって……っ」
いいいいいい言われ慣れてないし。てゆーか、そんなん、キイ兄、今まで言ったことないじゃんかあ。
って、後から文句言ったら、言ったらその時点で理性がふっとんだから、って返ってきた。でもまあ、これ、後からの話で、
「ん……あっ。あっあっ……ぁはっ、う、んっ……!」
なんで、こんなに気持ちいいんだろう、って。
「あっ……ああ!」
キイ兄の、動き。
最初よりずっと、滑らかになって、それって、あたし、が、感じてるから、で。
「……キ、兄……ん、んっ」
あたしの中で、質量ましてばかりみたいな、キイ兄、それでも、滑らかなのって……、
あたし、濡れてて。
また、奥までキイ兄、入ってきたとき、その、液体の音、して。
ぬち、って。
「あ……たし、えっちだよぉ……」
「おれしか知らないから、平気だろ」
「それも、やだぁ……」
「やだって、おまえ……」
いかにも余裕ですって、喋ってたキイ兄、思わず、のど、つまらせた。
「……っ」
「キ……兄……?」
「……おいで」
一気に、腰、引き寄せられて、
「あ……ぁあっ!」
限界だって、思った。
「や……やっ……! それ、以上……やぁ……やぁあ! んっ……あ、あぁん!」
あたしも、
「あ、あっ! キイ兄……キイ、兄……!」
「みぃ……んっ」
キイ兄も。
「……イって」
イっていいよ、って、キイ兄の声。
「やだ……やっ、あ、ん、あ……はぁ……ぁはっ……恐……」
もう、じわじわどころじゃなくて。恐いくらいに気持ちがよくて。上り詰めてくるなにかが、切羽つまって、ぱん、って弾けたがってるみたいななにかが、
「……みー……好きだよ」
ため息のほうが多く混じったみたいなキイ兄の声に、弾けた。
「……ん、ん、……は……ぁ、ヤ、だ、……やだ……やぁ! んっぁあ!」
もう、なんだかわかんないくらいの、気持ちいい、とかそういう一言でいうの、なんかぜんぜん違う感じの絶頂感、きて、キイ兄の腕、もっと叫びたいの我慢するみたいに掴んだ。
キイ兄の腕に爪、食い込んで、その痛みで最後にキイ兄、声、飲み込んだのか、よくって上げそうになった声、根性で飲み込んだのか、それはわかんないけど。
なんか、根性のほう、かなあ……、とか、気を緩めると情けなく遠ざかっていっちゃいそうな気分の中で思った。
思った、っていうか、うん、ちょっと、希望。
「キイ兄ぃ……」
キイ兄、コト、済んで、あたしから離れていこうとするの、ヤで、すごくイヤで、とにかく嫌で。
抜こうとするのに、あたし、余韻みたいに、どくん、て、またキイ兄締め付けてて。
とりあえず、そういうの収まるまで、あたし、キイ兄と一緒にいた。……一緒にいて、くれた。
スキだなぁって、思った。子供みたいに。離れるの、イヤがって。
太一には乱暴されたそのことに泣けたんだけど。
このままだともう一回このまま抱きたくなるから、とか言われて、それでもよかったんだけど、電話、かかってきて。そういえば、もう夕食の時間とっくに過ぎてて、きっと家からで。
キイ兄が電話取るのにあたしから離れて、それで、泣けてきた。
「みー?」
「うー、ちょっと、10才児の気分中ー」
大好きなものが、欲しくて欲しくて、欲しくて……。
キイ兄、ムリに「アホか」って顔した。なんかもう、ほんとうに、危機一髪って感じで、10才だったあたし、抱かなくてよかったよ、って感じで。
「あれだけ乱れといてなにが10才児なんだか」
「えええええ、み、みだれてないよ。さすがにあたしにもハジライあったよ、って感じだよ」
げげ現に、ほら、裸なの恥ずかしくてベットからでででで出られなくって、服はいつ着たらいいのかなあ、とか考え中なんだよ、ちゃんと。
キイ兄はそんなあたし、おもしそろうに眺めて、
「ふーん」
とか言った。なんか、とりあえず、あたし、聞き返す。
「……なにが『ふーん』?」
「だったら、次はどれくらい乱れてくれるのかな、と」
「つつつつつ次……ですか……?」
あー、えーと、そっか、次か。それはさ、ずっと一緒って、ことだよね?
って、聞こうと思ったら、キイ兄、耳元で、
「次はあんなことやこんなこともしていい?」
えーろーおーやーじーいーいーいーいー!
とか心の中で叫びつつ、いつの間にか涙、引っ込んでるのに気が付いて、なんだかキイ兄にいいようにあやされてるのに気付いた。だって、
「いい?」
って聞かれて、
「いいいいいいですぅ」
とか、あたし、答えてるし……。
あのね、駄菓子屋さんとかで10円とか出してやるクジ、知ってる?
たとえば、当ると大きなチョコレートもらえるんだよ。そんで、はずれだと小さなチョコレート。
そういうのね、何種類かやるんだよ。
お正月とかお盆とか、親戚が集まるとみんなで。
そのときのクジはね、はずれだと飴玉イッコなんだけど、当たるとぬいぐるみもらえたんだよ。くまの、大きなの。
当たり、欲しいと思うよね?
……欲しかったんだよ。
うん、みんな欲しかったんだよ。
だから、しっかり、あたしもほしかった。
クジは、次は誰の番、て決まってなくて、適当でみんなで引きっこして。
隣のみどりちゃんが引いたから、なんとなく、次は、あたしの番で。ドキドキしながら引こうとしたら、フミくんがね……えーと、キイ兄なんだけど、そのときは孝文の『タカフミ』のフミ君で、とにかくフミ君がね、
『みー』
って呼んだから。
『なあに?』
『当たるよ』
『? くまさん?』
『そう、きっと当たるよ』
だから引いてみなよ、って。
あたし、10歳で。
フミ君17歳で。大人でしょ? だからぜんぜん、フミ君のこと疑ったりしないで、
『ホントに? すごいね』
って、引く前から当たったつもりで引いて。
『うわあ!』
それが本当に当たってたの、もうすごくてすごくて、くまさんもらえたことより、とにかくすごくて。
あたしの、魔法使いだと思ったんだよ。キイ兄が。
キイ兄はね、色々ちゃんと計算、してたみたい。確率とか、なんか、聞いても良くわかんないこと、色々。
『すごいね、フミくん、すごいね!』
そのときもらったのが、どんなくまさんだったのか、覚えてない。キイ兄がとにかくすごくてすごくて、すごかったと思ったことしか、今は思い出せない。
魔法使いだ、って思って。
昨日の夜、夏休み特集でやってた奇術師のなんとか、っての思い出して。魔法使いと奇術師のちがいがよくわかんなくって、
『フミくんはさあ、えーと、キー……』
奇術師みたいだね、って、言いたかっただけなんだよ。別にぜんぜん魔法使いでもよかったんだけど、なんか咄嗟に「キ」って出てきて。
でもうまく舌、まわらなくて、
『キ……キー……』
って言ってるうちにケンくんが、
『キジンヘンジン?』
とか言い出して。
だからつまり、キイ兄の「キ」は奇人○人の「キ」……。
「あー、○人変人ね」
念のため、一部伏字、って感じで、太一、オハギに玄米茶すすった。
キイ兄があたしの魔法使い、ってクダリは、
「あー、そんで美野、無意識にキイ兄特別扱いなんだなあ」
とか、納得してた。
「特別扱い?」
「オレは平民で、キイ兄はお貴族サマ、じゃん」
おまえ、前からそーゆう扱いじゃん、って、今ごろなに言ってんの? って感じで。
その言い方がなんだかムショーにかわいくなかったので、あのとき、くまさん当たって、
『うわあ! すごいね!』
って、136%くらいの全快の満面の笑顔作ったあたしにキイ兄がイカれたらしい、ってクダリは話すのヤメた。
「……でさあ、おまえさあ」
「なによ?」
改まって声、太一が寄せてきたとき、ちょうど、家庭教師顔のキイ兄がドア開けて入ってきて、だから太一、やめとけばいいのに、つい流れのまま、
「キイ兄はヨかった?」
とか聞いたから。
「教育的指導!」
キイ兄のケリが見事に決まった。
キイ兄が現れなかったら、
『ヨかったに決まってるじゃん』
なんて言ってたかもしれないのは内緒で、あたし、ナンマイダと太一に両手合わせた。
はいはい、ご愁傷サマ。
おわり