〜 アカリ 4 〜



 真己くん、あたし押さえ付けてた力、ふって緩めた。緩まって、あたしが、真己くん、掴んだ。
 窓から入ってきてる風、あたしと真己くんの上の方、通ってくから、あたしと真己くん暑くって。夏の、夏休みの時間の中で、どきどきする。
「……珠美、さあ。おれのこと好きな自覚、前からあった?」
「あった、よ」
「あった、んだ?」
「あー、でもさー」
「でも?」
「真己くん、彼女ができても、でも、なんか、変わんなくて一緒にいてくれたからそれでいいや、って。ヘタに好きとかバレちゃったら、なんかね、かえって一緒にいられないかな、とかね」
「思ってた?」
「そー。でもバレちゃっても、大丈夫だったね」
 あたし、えへへって笑ったら、真己くんも笑う。
 笑った顔、近付いてきて、また、キスする。
「おれも、おれ、珠美好きだけど、でも珠美がおれのこと好きじゃなくても、彼女とかできても、あんま何にも変わんないで一緒にいたりしたから、それでいいやって思ってた、けど」
「けど?」
「昨日、珠美とキスしちゃったし」
「キス……?」
「珠美としたのが、一番気持ちよかった」
「…………うわっ」
「うわ?」
 恥ずかしーいー。って、あたし顔隠そうとしたの、真己くん、笑って邪魔した。
「ほんと、珠美以外なんてどーでもいいや」
 真己くん、あたしの体、見下ろして、息、飲み込んだ。こくん、て音、した。
こくん、て動いた喉、あたし、触った。触ってたの無意識で、だから真己くんに、その手掴まれて、初めて、無意識だったのに気が付いた。
「う……わあ」
 無意識に、真己くん触ってるんだよ。こここここんな無意識はどーよ!? って動揺したとこに、べろのキス、された。
「ふ…………っぅん……っ」
 口、こじ開けられて、真己くんが入ってくる。
 真己くん、セーラーの裾のとこから、あたしのわき腹、撫でた。
 そーやって真己くんがあたしのお腹の辺、ずっと、確かめるみたいに触ってるの、あたしもまた真己くん触りたいな、とか思ったけど。なんか、あらためて思うと、手、どーしていいのかわかんなくって。てゆーか、最初っから最後まで、今この瞬間にも、何をどーしたらいいのかわかんなくって……。
 真己くん、飽きないみたいにあたし、触る。
 ……なんか、暑い、から、あたし、汗っぽい感じ。真己くんの手も、汗ばんでる感じ、した。撫でるの、するっていかなくって、すごくぎこちない感じ、で。そのぎこちない感じに、
「んん……っ。……き、くんっ」
 ……きくん、真己くんっ!
 気持ちいい、とか、分かんないけど、ちょっと慣れなかった感じなの、慣れてきたみたいに、もっと、キスして欲しい、とか思ってた。
 そーやって、なんか、あのさ……。
 なんか、一緒になってるとことかが、気持ちよかった。べろ、とか。さっきまで気持ち悪かったのもう忘れてた。
 真己くんの手、ブラにかかって、あたし、体、よじった。
 い、やーん、恥ずかしい、これ、ほんとに絶対恥ずかしいんだけどっ。
 キス、されてるままで、逃げられなくて。そのどこにも逃げられないの、うわ、ちょっとほんとーにあたし、真己くんとするんだ、とか、実感、して。
 実感したのと、真己くんがブラ手繰りあげて胸、直に触ったのが一緒、だったから、
「ぁや……っ」
 ヘンな声、出した自分にびっくりした。びっくりして、ぎょ、ってして、うわここ教室だよ、ってなんだか唐突に思い出してまたぎょっとした。
「……真己、くん……」
 真己くん、やっぱりあたしの言いたいこと分かってて、
「下校時刻まで誰も来ないって…………多分」
 ……最後の方、ちょっと聞こえなかったんだけど、多分、とか言ったーー!
「や……だっ」
 あたし、咄嗟に言ってて、
「珠美」
「…………っや」
 やだー、って。
 でも、いやなの、なにがいやなのかとか、わかんなくってちょっとパニックだった。教室、とか、真己くんがあたし触ってること、とか、
「……珠美」
 珠美、って呼ぶのも惜しむくらいに、真己くんキスしながら、胸の……。
 胸の……っ!
「あっ! ……やだっ! 真己くん!」
 う、わぁ! って、あたし、背中のけぞった。
 いやだ、やだやだ、たいむたいむー!
「……真己く……っ」
 真己くん胸、触ってたの、なんかこう、手の平で触ってるふうみたいだったの、指で……っ。胸の先……。
「や……っんっ……や、あっ!」
 胸の先、ぐりって触られて、背筋の方まで鳥肌たった。なんか、そのヘンな感覚我慢できなくて、足の指先の方までもどかしくなる。
 あたし、あたしのからだもどかしい。真己くん、あたしのセーラー服、もどかしそうに、伸びない綿の布、ちょっと苛々したみたいに、
「……珠美」
 あたしの腕引っ張って、あたし寝転んでたの起こして、でも起こしたのはいいけどその後どうしたらいいのかわかんないみたいに途方にくれた顔した。
 あたし、あ、そっか、セーラー、脱いだほうがいいのかな、とか頭では思ったんだけど、なんか息、あがってて、真己くんにもたれてるのが精一杯で……。でも、
「珠美、上、脱いで」
「……え!?」
 言われたら、ものすごく反射的に、まくれあがってたセーラーの裾、脱ぐの反対! って感じで脱がされないように抱き締めてた。
 だって、あの……だから、だってさあ……っ。
「珠美……」
「でもー……」
「……脱いで」
 真己くんも、呼吸、早かった。脱いで、って、頭、胸に寄せてくる。そんなことされたら脱げないー、と思いながら、真己くんの髪、触った。
「もー、甘えんぼだあ」
「……甘えんぼだもん」
 セーラーの上から、胸、触るの、あたし、うひゃ、って、身をすくめた。
 な……んか、さあー。
 あたし、セーラーの脇のチャック、あげて、よっこいしょって脱ぐの、真己くん見てて、脱ぎ終わるのぎりぎりに待って、あたし、脱いだセーラーで慌てて胸、隠そうとしたの、見通してたみたいにセーラー取り上げて、かーえーしーてー、って心の叫び無視して抱き締められた。……抱き締められたと思ったんだけど……、ブラ、取られた……。背中のホック、するって。
 取られたあ! と思ったところに、たった今空気触ったとこ、空気じゃないのが触って、その、感触に、
「……っっんん!」
 真己くん、胸、舐めた……舐めた!
「真己く……!?」
 真己くん、て呼んだはずだった声、
「ん、あ……や、だ……やんっっ」
 背中の、奥の方からの声になる。胸の先、べろの先でぐりぐりするの、ぞ、ってした。
 なんで、こんな……っ。
「もっと」
 真己くん、あたしの胸に、顔、押し付けながら、
「もっとよくなっていーから……じゃないと……」
 なに? って、あたし聞き返せなくて、ただ、へんな声ばっか、出て。
 よく、っていうか、これ、あのっ、や……いやなんだけど……っ!
「ん……ぁっ。真、己くんっ」
 真己くん、そこから、なに? ってあたしちょっと見て、目、が合って。茶色い目、嬉しそうに笑うから、なんか、あの、我慢、できなくなって、あたし、真己くん抱き締めた。真己くんの頭、ぎゅってして、そしたら真己くんびっくりして、真己くんがびっくりしたのにあたしもなんかびっくりして、ふたりして勢いよく床に倒れこんだ……と、思ったんだけど、
「あ、っぶな……」
 うわあ、頭、床にぶつかる、痛いよー! とか思った瞬間には、真己くんがあたしの頭、抱え込んでた。だから、ごん、て鈍い音、真己くんが床に腕、ぶつけた音……で。
「真己くん!?」
 痛い? 大丈夫!? ってかけたかった言葉、わざとキスして言わせてくれなかった。
「……おれのことはいーから」
「いー、から?」
「珠美、自分のこと、心配してろよ」
「なんで?」
 って、あたし心の底から言ったの、真己くんちょっと絶句した。絶句、したんだけど、でもこれだけは言っとかなくっちゃ、って感じで、
「こればっかは、おれ、そんなに信用されても……さあ」
 真己くん、自分のシャツのボタン、外しながら、
「途中で嫌がられても、さあ」
 あのさあ、そのさあ、とか真己くん、珍しく言葉、濁す。
「……おれ、多分、てか絶対、止まんないから」
 あたし、じって見てたのに、ぷいって少し横向いて、
「子供だもん……」
 言いたくなさそーに、言いながら、真己くん、シャツ、脱いだ。少し横向いてたの、もうあたし見てて。
 あたしの体、跨いでたの、あたしの膝の間、片膝、割り込ませてきた。
「珠美、それでも、して……いいよ、って言ってよ」
 真己くん、スカートの中、手、入れた。
「いい?」
 真己くんの手、太ももから、おしり、触った。うーーー。あたし、ぎゅーって目、閉じるの、珠美、って呼ぶから開けて、
 いいよ。
 って、
 いいよ、って、そんなのもうこうなったらどんと来いって感じなんだけど、なんか、こっ恥ずかしくってどーしても口で言えなくて、真己くんに、しがみついた。
 あたしも、真己くんも、何にも着てない体、触って。
 ぎゅ、って体、重なって。
 ……う、わあぁ。
 あの、その、ねえ……っ。
 あの……だって、あの、真己くん、てゆーか、ぎゅって、押し付けてくるの、なんか、ズボン越し、だけど、硬……かった、のは、さあ……っ。
 あたし、おずおず、真己くん、見た。
 真己くんも、おず、ってあたし、見た。
「……えーと、それ……」
「そー」
 そーだよ、って。
 それ、が、入る、よ、って。
 うわ、それは、やっぱり、ちょっと、怖い、かもー。ち、ちちち知識では、知ってるけど、学校で習ったし……えーと、一応。
 そう、一応、習った、けど……っ。
 けどさあっ!
 真己くん、あたしの下着の中、するって入ってくる。そ、そこ、触られて……。
「……うー」
 あたし、真己くんに、とにかくしがみ付いた。
 真己くんの指、なんか、どこか探すみたいに触る、から。
「……っぅ、んっ」
 時々、ヘンな、なんかっ、声とか出ちゃう感じになるの、こんなの、習ってなくて、もーぜんぜん、どーしたらいいのかわかんないんですけど……っ。って、わけわかんないうちに、真己くん、あたしの胸、さっきみたいにしてそこと一緒に触ってくるから、
「っん……やぁ、あ、あっ」
「……かわいい」
 真己くんがそう言ったみたいなの、惜しい、あたし、聞こえてなかった。いっぱいいっぱい、だった。真己くんが触るの、手は、肌とか触ってたのに、指が、中のほう、触り始めて。
「……んんっ……っ、や、いや……ん」
 いや、って、だから、イヤ、って、そーゆうイヤじゃないんだけど、さあっ。だから、真己くん、あたしがイヤイヤ言っても、ちっともやめる気ないっぽくって、さあ。
「……たまみ」
 真己くん、さらに奥の方、触った、から。
「ん……ぁあっ!」
 や……あのっ、ぞぞ、ってして、
「……痛い?」
 真己くんに聞かれたのに、首だけ、そっと振った。痛くない、よ。って、思いっきり振ったら、真己くんの指、なんか、そこで擦れるみたいな気がしてできなくて。……って、あたしはこんなに神経使ってるのに! 真己くん、もっと、ズルって、指、入れてきた。
「……んーっっ」
 あたし、限界な感じで真己くん掴んだ。多分、きっと、ものすごい力で必死に腕、掴んでたと思うんだけど。後からそこ見たら痣になってたくらいなんだけど、あたしも、真己くんも、今はそれどころじゃなくて。
「珠美……珠美、おれ、入れていい?」
「……え……?」
「だから、指じゃなくて」
「や……」
 やだ、じゃなくて、間違い、それ、間違い、で。
「……ん、あの……わかっ」
 わ、わかんないー、ってあたし言いたかったの、真己くん、わかった、って顔、して。
「大丈夫だから、力、抜いて」
「ま、きくん……?」
「うん……」
「……まき、く……」
「……うん」
 意味、なんてない。
「まき……くん」
 意味なんて、ないよ。ないけど、呼んでたかっただけ。
 なんか、真己くんに触られてるうちに、気持ちいい、とか思うのが夢の中の感覚みたいで、だから、うわごと、みたいで。
 真己くん、やっと、って感じでベルト緩めるの、あたし、ぼーっと見てた。そしたら、見なくていい、とか、言われて、え、いや、なんか色々真己くんにばっかやらせてるよーな気がするけど、あたしもなんかする? とかいうようなことを聞いたら、……なにもしなくていいから、とか言われて、はーい、って返事、したようなしてないような……。
 ……あー、でも、返事の記憶はないけど、真己くんのは……見た、です。あ、ちょっと、それ、ムリ、ってゆーか、入んない入んない、って近付いてきた真己くん押し返したら、って、そこ、無意識だけど……そしたら、真己くん、止まんないって言ったじゃん、とかいかにも間違ってないみたいに言って、
「珠美も濡れてる」
「あ……ぇえ?」
「だから入るよ」
「そ……なの?」
「そう、みたい」
「……あー、そう、なの」
「指は、入った」
「……やあだー、もー」
 真己くんの茶色の目、優しく笑う。
 ……ちょと、反則っぽかった。
 真己くんだって、我慢、してたくせに、そこでそーゆう顔できちゃうのは反則、っぽい。……後で聞いたら、それはそれで真己くんも余裕がなかったから、とか、言ってた、けど。あたしも、ちゃんと余裕のないあたしじゃなかったら、真己くんの笑顔にぜんぜん余裕なかったの、気が付いたかも、だけど。
「珠美……」
「ん……は、い?」
「……無理だと思うけど、もっと、力抜いてくれないと」
 真己くん、すっかりあたしの足の間、入り込んでて、
 真己くんが、あたしの濡れたとこ、ず、って触って、あたし、うひゃ、って声、あげながら。
「……っふ、ぅん……っ」
 真己くんが、入ってくる、の、なんだろ、なんて言えばいいのか分かんないけど、体中に、真己くんが入ってくるみたいな感じ、で。
 真己くんが伸ばしてきた腕、また強く掴んだ。
 あたしが、辛そうに掴んだから、真己くん、気持ち、あたしの中にもっと入りたいの我慢するみたいに、喋る。痛くない? って、何回も聞く。聞かれるたびに、だだだ大丈夫、って、あたし、頷いて。頷くたびに真己くん、入ってきた。
 ……痛くない、けど、ヘンな感じした。頭の中、ぐらぐらする。
 こんなの習ってないー、って頭の中、ぐるぐるする。真己くんだけ、強く掴んで。真己くんだけ、感じて。なんか、全部、真己くんだけで。
「珠美……」
 聞こえる声も、真己くんだけで。
 体中、真己くんな感じだった。
 す、ごい、よね。
 ……すごい、よね、って思ったら、うわ、涙、出てきた。
 真己くんが驚いた顔して、動き、止めた。
「珠美、辛い?」
「……違……」
「でも……」
「……あの、ね」
「うん?」
 涙、ちょっと出ただけで、あのね、って続けたかった言葉に、自分で赤くなった。ぶわってあたしが赤くなったの、なんだよ? って真己くんが聞いてくる。
「……っと」
 もっと。
「真己くん……きて」
 入って、来て、よ。だって、あの、ホント、嘘でしょ!? ってくらい、
「……気持ち、い、よ?」
 気持ち、いいよ? 
 って、あああああのさ、あの……気持ちいい、とか、せっくすの気持ちいいの、よく、分かんないけど、
「真己くんが、傍にいるのが、気持ち……いいよ?」
 足、開いて、かわいいとか、そーゆーのとはちょっと無縁っぽい格好なのに、そんな格好、あたし、恥ずかしいの分かってるみたいに、真己くん、ちょっと眩しそうな顔した。
「……うん」
 うん、って、真己くんもなんだか恥ずかしそーに、
「おれも気持ちいい」
「……ほんと?」
「ほんと」
 真己くん、空気とか、あたしとか、自分とかに暑そうに目、細めて、ゆっくり入ってきてたの、なんか考えるみたいに止まった。え、なあに? ってあたしの顔、見て、見た、と思ったら、ぐ、って一気に入ってきた。
 それが……それが!
「……や、あ……んんっっ!」
 真己くん、あたしの名前呼んだ気がした、けど。
「あ、や……あ、あっ」
 真己くんがあたしの手、掴んだ。指、絡めるみたいに手、繋いでくる。珠美、って呼ぶ、けどっ。
「珠美……珠美」
「ん……ぅん……っ」
 頭の奥で、なんか知らない人が悲鳴上げてた。って、知らない人じゃなくて、そりゃ、それ、あたし、なんだけど。
 ぐ、って真己くんが入った瞬間が、ほんとに、悲鳴、あげる痛さ、だったから。なんだ、痛くないじゃんてなんか安心してたの一気に押し流されて、真己くんの手、握り締めた。油断してたよ、って、これ、油断!?
「ふ……、ぁは……んっ!」
 からだ、痛いのでがんがんする。真己くんがちょっとでも動くたびに、背中のけぞって、なんか、自分でのけぞっといて、それ、痛い、痛いっ。
「珠美」
 痛くて、ぶわって出てきてた涙、真己くんが舐めた。恐る恐る目、開けたら、真己くんも辛そうに細く息、してた。
「……う、わ、きっつ……」
 って、言われてもっ。
「……っど、したら?」
 あたし、やっと言った口に、真己くん、深いキス、してきた。真己くんのべろ、あたしに触る。繋いでない手が、胸、触った。
 痛い、んだけど、胸とか、ぞぞって感じ、また来て。
「んっ……う……っん……!」
 なんか少し、痛いのから気がそれたとこに真己くん、これで最後って感じで奥まで、入ってきて、
「っあ、あ、……や、ぁああっ」
 あたしの中、真己くんでいっぱいいっぱいになった。
 痛いの、残ってる、けど。
 真己くんにぎゅってされて、それで、終わりなんだと思った。だって、授業で習ったのの、絵、とか、挿ってるだけ、だったし。……えーと、まさにこの状態、だよねえ?
 だから、
「お、わり?」
 って聞いたら、真己くんぎょ、ってした。
「ぅぇえ、違う、の?」
「……お、まえ、実はぜんぜん分かってないだろ」
 しかもやっぱりちゃんと、あたしの考え、読んでて。
「いいから、保健の教科書は忘れとけ」
「……えー?」
「そんな不満そうに言われても……それこっちのセリフだし。てゆーか……なんでそんなモノ知らずかな……珠美ママの教育方針のタマモノ?」
「……モノ知らずって……なにさ」
「キスとか、今の、この先、とか」
「この、先?」
「そー」
 真己くん手、床について、自分、支えるみたいにして腰、退いた。それであたしに入ってた真己くん、遠ざかっていくの、
「え? ……や、……ぁあ、ああっ……!」
 なにしてんの? って考えるよりその前に、あたしの中、痛いの、とか、なんか、もっと、痛いのと違う感じ、とか。
 真己くん、そのまま、また入ってくる。
「あ、や、だ……っ。痛……痛っ! ……んっっ」
「……痛い、だけ?」
「……ん、ん、あっ…………っ」
「さっき、気もちいいって言った」
 言った、けど。
「や、や、だ、……や、真己く……ん……」
 さっきまで、やだ、って本気で言ったらそこで止めてくれそうだったのに、真己くん、もう止まってくれなくて、
「……あ、やああ!」
 声、そのうちに自分の声なのか、ちょっと、誰かの幻聴なのかわかんなくってぐるぐるしてきた。って、幻聴って誰のさあっ。あたし!?
「……珠美」
 真己くん、呼ぶから、あたし、返事、悲鳴、で。
 悲鳴でも返事、なんだ、やっぱり、あたしの声、じゃん、とか思って。
 そういうの、繰り返してるうちに、
「珠美」
 珠美、って。
 真己くんの声とか、真己くんにからだ揺らされるのとかに、ぐらぐらしてきた。
 真己くんがそのタイミングであたしの腰、引き寄せた、から。
「……あ……ぁあっ」
 どくん、って、いった。
 えーと、どこか……どっかが、そんなふうに音、たてたみたいだった。
 のけぞったのどに、真己くん、吸い付いてきて。そんなふうに近付いてきた真己くんにしがみついた。真己くんの背中とか肩とか、ぎゅって。
 すぐ、傍で、真己くんの息遣い聞こえた。はあ、って、それ、あたしと同じ。
「あ、はあ……っん、んん……っ」
「珠美、よくなってきた……?」
「わ……」
 わかんない、けど。さっきまで痛いののもっと奥の方にあったなんかが、痛いのより前に出てきたみたいだった。
 ぞ、ってする。なんか、真己くんの声とか、ちょっと動いたのとか、みんなその、ぞ、っていうのの引き金になる感じだった。あの、だから、ちょっとでもそーなんだから、真己くん、大きく動いたりすると、あたし、声、我慢できない……っ。
「真己くん……ま、き、くん……」
 やだ、こんなの、おかし……っ。
 我慢、ぜんぜんできなくて、真己くんにぎゅってしてたの、思わず、爪、立ててた。
「痛っ……」
「え、あの、ごめ……」
 あたし、慌てて謝るの、真己くん、いいから、って言った。言った、って言っても、真己くんの声、っていうか、息、なんかもう色っぽくって、どきってしたの、これ以上どうにもどきどきできそうもないとこに、さらに、どき、ってしたから。
 真己くん、いっぱいにあたしの中、入ってきたから。
「……やぁっ、あ、やあっ!」
 どきどきするの飽和状態で、もう、無理で、なんか、胸の奥の方、がばって大きな波に襲われたみたいになって……そんで、その後のこと、ちょっと、覚えてない。



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